『煮えたぎる川』  アンドレス・ルーソ | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『煮えたぎる川』  アンドレス・ルーソ

米国の大学院博士課程で地球物理学、地熱研究を行っている若手研究者が、ペルーのアマゾン河上流で煮えたぎる川の存在を聞きつけた。ペルーの密林地帯にかかる熱湯が大量に出ることは信じ難い。大規模な熱水が噴出するのは、火山地帯でマグマに熱せられた地熱水がなど地下の地熱活動によって熱・熱水が地表に現れるもの、あるいは地熱水が地球の深部から急速に上昇してできた非火山性熱水系、あるいは油田事故の結果としてなどの人工のものが考えられる。

ペルーのアンデス流域の都市プカルパに飛び、パチテア川を遡行して密林の中のマヤントゥヤクの町に赴き、旧油田とパイプラインがあった奥地に入り、ついに86℃近い熱水が大量に沸き出ている現場を目撃する。最も近い活火山は640kmも離れており、ふつうの冷水の川が途中3か所で熱せられているというということは油田起因でないと思われ、これまでの同地の地質調査では火山やマグマに関わる兆候は出ておらず、持ち帰った川の水のサンプルからは大気・雨以外の化学物資は出なかった。再度の現地調査では、河岸の断層から泡と熱水が噴き出しているのを見る。

1920~30年に行われたペルーのジャングル地帯での石油開発と同時に米スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージーとロックフェラー財団によって秘密裏に33年に行われた地質調査レポートを見つけ、その中で同地の石油開発着手以前から煮えたぎる川「アグア・カリエンテス・ドーム」を発見していたことが証明された。

2013年にアグア・カリエンテ油田を保有するガス会社の許可を得て本格調査に乗り出すが、途中のジャングルの樹木がすっかり伐採され牧場に変えられていた。その非道さは「泥棒男爵」(スペイン征服者)やジャングルにとっての最大の脅威である「先住民であることを忘れた先住民」による惨状に対し、むしろ石油会社の方がジャングル維持の擁護者であるという現実を見る。煮えたぎる川の周辺にまで開発と森林破壊が進み、ジャングルはすっかり姿を消していた。

現在これまで収集してきたサンプル、データの解析が進んでおり、熱水の中に微生物が極限環境の中で生きていることも判明したが、周囲の環境を保護する法制はまだ出来ていないが、エコツーリズム、先住民文化と伝統的な薬についての教育センター設立の試みが始まり、著者たちも責任ある開発を通じてそこに住む人々に権利と利益をもたらすことを目標に活動している。

〔桜井 敏浩〕

(シャノン・N. スミス訳 朝日出版社 2017年9月 230頁 1,750円+税 ISBN978-4-255-01016-8 )