『エクアドルを知るための60章』 新木秀和 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『エクアドルを知るための60章』 新木秀和


スペイン語でずばり「赤道」を国名とする小さな南米の国については、日本では世界自然遺産であるガラパゴス島を領有する国、首都キト郊外に赤道記念碑のあること以外、自然、文化、歴史など多様性に富んだ、魅力に富んだ国であることはあまり知られていない。

本書は、歴史、考古学、教育、美術、動物生態学、文学などの研究者やエクアドルで農水産、製造業、貿易に関わるビジネスマン、自然環境保護やエコツーリズム活動を行うNPO等の関係者など、多方面にわたる24名の専門家による解説を提供している。

自然環境、歴史と社会の形成とその問題点、文化とアイデンティティの探求、教育、文学、芸術、スポーツなど豊かな生活文化、主要都市の風景、地域と先住民や黒人奴隷の末裔も多い民族の活力、農業部門の再編を軸とした開発の展望、対外関係、移民、そして野口英世の滞在、高地にある首都から「アンデスの声放送」を続けた尾崎夫妻、戦後いち早くサイザル麻の栽培・加工で進出した古川拓殖に始まる人的交流、バナナ、石油や魚粉輸出などを主とする日本との関係などを網羅的に解説していて、この知られざる国を理解する上で有用な一冊である。(近年、エクアドルについてまとまった本といえば、このほか本誌2005年10月号で紹介した『エクアドル —ガラパゴス・ノグチ・パナマ帽の国』 寿里 順平著東洋書店刊 がある。)[桜井 敏浩]

(明石書店384頁2006年6月2000円+税)

『ラテンアメリカ時報』2006/7年冬号掲載(社)ラテン・アメリカ協会発行