『遠くて近い国 —シニア・ボランティアの見た21世紀ブラジル』 真砂 睦 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『遠くて近い国 —シニア・ボランティアの見た21世紀ブラジル』 真砂 睦


著者はブラジルに、1970年代のいわゆる「日伯蜜月時代」とそれに続く80年代の現地経済混乱による「日伯関係空白の時代」の一時期を、野村貿易の駐在員としてベロオリゾンテ、リオデジャネイロで過ごし、退職後2003年から3年間、国際協力機構(JICA)派遣の日系社会ボランティアとして再びブラジルで生活した。その間、故郷の和歌山の地方紙に投稿した報告に加筆修正した、全67編の見聞録である。

歴史と文化とそれを背景にあるブラジル人の生活と性格、日系移民の過去と現在、そしてそのブラジル経済・社会への貢献、農牧業や工業の変化、人種差別の有無、農地改革や縁故主義、最近のブラジルの産業や社会変化のトピックスなど、広範な話題をそれぞれ2乃至4頁の短い文章で紹介している。しかし、多くのこの種の滞在記や見聞録とは異なり、相当ブラジル事情に通暁していなければ書けない、しっかりした裏付けがあることが窺え、内容の濃い、分かりやすい解説書になっている。秋田市にあるこの地方出版社は、これまでも中隅哲郎氏の『ブラジル学入門』、『ブラジル観察学』、『ブラジル日系社会考』はじめ10余点の優れたブラジル関係書を出版している。

(無明舎出版 211頁 2007年8月 1600円+税)

『ラテンアメリカ時報』2008年春号(No.1382)より