『社会の鏡としてのブラジル文学—文学史から見たこの国のかたち』田所 清克・伊藤 奈希砂 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『社会の鏡としてのブラジル文学—文学史から見たこの国のかたち』田所 清克・伊藤 奈希砂


日本において比較的読まれるようになってきたラテンアメリカ文学の中で、スペイン語に比べるとポルトガル語を解する日本人は少ないこともあってか、ブラジル文学は依然マイナーな位置にある。大きな魅力をもったブラジルを知る上で、社会史、文化史の一つとしてその文学を知ることは大いに有益である。

本書はブラジル文学を詳細に時代区分し、1500 年から現代に至るまで、それぞれの時代の特質、歴史的・社会的背景を解説して、代表的な文学作品の著者、著作、その時代性と意義などを紹介している。日系コロニアの日本語文学の章も設けられており、田所教授(京都外国語大学)の収集した膨大な文献・資料からの豊富な引用訳文、資料写真、年表、邦訳文献・参考文献リスト、索引も付されていて、ブラジル文学の背景にある時代性と思想、文化性も分かり、全体像を掴むよい手がかりとなる労作である。

(国際語学社 2008年9月 487頁 4500円+税)

『ラテンアメリカ時報』2008/9年冬号(No.1385)より