『メキシコ革命とカトリック教会 —近代国家形成過程における国家と宗教の対立と宥和』 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『メキシコ革命とカトリック教会 —近代国家形成過程における国家と宗教の対立と宥和』


メキシコの国民の90%弱はカトリック教徒だが、カトリック教会が300年に及んだスペイン植民地時代に蓄えた富と権力は1854〜76年のレフォルマ革命において剥奪され、国教の地位を失い、さらに1910年に始まったメキシコ革命によって教会と聖職者は革命勢力により激しい攻撃を受け、1917年の革命憲法では教育の非宗教性、修道院の禁止、教会の不動産保有の禁止、宗教団体と聖職者の活動の制限など、反教権主義といえる条項が盛り込まれた。PRIの歴代政権下で堅持された反教権主義は、1992年にサリナス政権に見直されるまで続いた。現在はこの1992年憲法改正とその施行細則によって、教育を非宗教的なものにする原則は保持されたが、聖職者の教育への関与が大幅に緩和され、修道院の設立の容認、宗教団体としての法人格の承認、聖職者の投票権の付与、野外での宗教行事や制約があるとはいえ教会の不動産取得・所有も可能となった。

ではなぜメキシコ革命がこれほどカトリック教会を敵視してきたのであろうか?という問題について、著者は植民地時代に教会が絶対的支配者として君臨していた時代から、メキシコの建国期、レフォルマ革命、ディアス独裁(1876〜1911年)の歴史的に遡って考察し、メキシコ革命時に教会が反革命派と結びついたこと、1917年憲法以降におきた教会、信徒と革命政府の対立の後、両者の妥協による協調体制、1980年代になってのPRI支配体制の弱体化、経済混乱に教会が政治の民主化と人権問題と追及する非政府組織としての発言権を強め、1992年の憲法改変にもっていたことを詳細に検証している。

現在でも国家と宗教の関係は多くの国家で多様な形で存在しており、その中でこのメキシコの政教分離の経緯と内容の変遷は様々な示唆を与えてくれる。メキシコ近・現代史研究者の博士号請求論文に加筆修正した貴重な労作である。

(国本 伊代中央大学出版部2009年3月426頁4700円+税)