『現代アンデス諸国の政治変動-ガバナビリティの模索』 村上 勇介、遅野井 茂雄編著 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『現代アンデス諸国の政治変動-ガバナビリティの模索』 村上 勇介、遅野井 茂雄編著


早い時期から脱軍政と市場経済化を経験し、現在はポスト新自由主義といえる政治情勢にあるラテンアメリカの中で、近年政治の不安定が目立つアンデス諸国の政治を、歴史や構造的な条件を総合的に情勢分析している。

第?部比較研究編では、中央アンデス諸国のポスト新自由主義の開発政治と政党、先住民運動の変化、フジモリとチャベスを例に政党衰退と「アウトサイダー」の登場、麻薬対策の反動としての「コカ・ナショナリズム」を比較し論じている。第?部各国分析編では、ベネズエラのチャベス政権が掲げるボリバル革命の背景とその政策、チャベス政権登場の背景となった1990 年代の社会変動と政治変化を、ボリビアにおける先住民の権力獲得、エクアドルの政治変動と社会運動、コロンビアの政治変動と政党システムの変化、ペルーのフジモリ後の小党分裂と進まない制度化を取り上げている。

それぞれの国、分野の専門研究者による合わせて10 本の論文は、全体としてこの地域で、構造的な問題を含む社会経済面での悪化が、新自由主義路線の見直し要求となり、既存政党の崩壊とそれに代わる政治制度の混乱の中から、いわゆる左派政権を輩出させていることを理解させてくれる。

(明石書店 2009年2月 425頁 8000円+税)

『ラテンアメリカ時報』2009年夏号(No.1387)より