この「エリアスタディーズ」シリーズでは、すでに『エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグアを知るための45 章』（田中 高編著 2004年）が刊行されているが、本書はそのうちのエルサルバドルに関する15章を改訂してさらに40章を加えたものである。ラテンアメリカ経済の研究者であり、民間出身大使として2003〜07年の間エルサルバドルに駐在した細野政策研究大学院大学客員教授を中心に、様々な分野で中米に関わってきた18 人の執筆者を得て、入門書であると同時に研究書としてもレベルの高いエルサルバドルの総合解説書となっている。
変貌を遂げつつある政治と経済、エルサルバドル現代史で大きな傷痕を遺した内戦とそれからの復興、いろいろな問題を内包する社会の姿、歴史と自然環境、マヤの遺跡や『星の王子さま』の著者サン= テグジュペリの妻の出身地としても豊かな芸術と文化遺産、そして2005年に修好70周年を迎えた日本との関係を学生親善団の派遣、日本企業の進出、ODAなどを通じた深い絆に至るまで、この国を知る上で必要不可欠な小解説が網羅されている。
（明石書店 2010年5月 321頁 2000円＋税）
『ラテンアメリカ時報』2010年夏号（No.1391）より
