『ディエゴ・リベラの生涯と壁画』 加藤 薫 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ディエゴ・リベラの生涯と壁画』 加藤 薫


20世紀前半、メキシコのみならず世界の現代美術に大きな影響を与えた画家の生涯と作品を克明に紹介する大部な労作。リベラの生涯を辿って、グアナファト市での誕生からメキシコ市での美術学生までの時代、メキシコ革命時の初の個展開催をはさんで欧州留学により成長していく姿、帰国後にメキシコ壁画運動の中心人物として数々の作品を生み出していく過程、その後一時米国へ渡り壁画制作に打ち込んだが、ロックフェラー・センターで書いた壁画にレーニンの肖像を書き込み破壊された事件もあった米国での挑戦の時代、メキシコに戻っての活発な壁画制作活動と、日系人彫刻家イサム・ノグチ、亡命してきたロシアの革命家トロツキーとの妻フリーダ・カーロをも巻き込んだ愛憎劇もあった波乱の生活の時代、そして1954年のフリーダの死と後を追うような1957年の死(70歳)、彼の作品を集めた財団の設立や作品の国有財産化などにまで言及した晩年の時代の6部構成になっている。ラテンアメリカ美術研究の第一人者による、リベラの全生涯とその活動の克明な記録と解説。

(岩波書店 2011年3月 868頁 18000円+税)

『ラテンアメリカ時報』2011年夏号(No.1395)より