『古代メソアメリカ・アンデス文明への誘い』 杉山三郎・嘉幡 茂・渡部森哉 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『古代メソアメリカ・アンデス文明への誘い』 杉山三郎・嘉幡 茂・渡部森哉


世界四大文明は、いずれも大河の畔で交易に便利な開けた土地で栄えたが、メキシコ、中米のメソアメリカ文明、そしてインカなどのアンデス文明は、かかる立地にはなく鉄器は持っていなかったなど大きく異なるが、六大文明というべき高度な文明をもっていた。

本書は、モンゴロイド系狩猟採集民がユーラシア大陸から渡って入植し、オルメカ、マヤ、テオティワカン、アステカなどの文明を発展させたメソアメリカと、チャビン、ナスカ、モチェ、ワリ、チムーなどの文明が各地に興りインカに至ったアンデスにおいて、どのように文明が生まれ、地域・時代によって多様性をもった文明を発展したかを、多くのカラー写真・図表によって解説した入門書。

テオティワカンで長年発掘調査を行ってきた杉山愛知県立大学大学院教授、メキシコ国立自治大学でメソアメリカ考古学を専攻した嘉幡同学研究員、アンデスで考古学調査の経験を重ねてきた渡部南山大学准教授が、それぞれの得意分野を執筆しているが、もともと愛知県陶磁資料館で2011年に開催された企画展「アンデス・メソアメリカ文明−古代の暮らしと聖なる動物たち」の展示カタログとして製作された解説書である。展示された石器、土器などの背景にある、自然環境に対応した多様な文化の形成、地方で興亡した文明を理解するために、それぞれの国家体制や統治システム、人々の宗教観や世界観に至るまで分かり易く説明しており、写真、地図や遺跡の見取り図、図表・年表も随所にあって、小冊子ながら内容のある解説書となっている。

(風媒社2011年6月140頁1600円+税)