『カリブ海に浮かぶ島 トリニダード・トバゴ −歴史・社会・文化の考察』 北原 靖明 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
Japanese English

『カリブ海に浮かぶ島 トリニダード・トバゴ −歴史・社会・文化の考察』 北原 靖明

トリニダード・トバゴは、西アフリカから奴隷として連れてこられ、インドから年季労働者が入って開拓され、英領から独立した。「第一部 現代の社会と政治」では、独立後も西インド連邦の崩壊など、歴史家で初代首相になったウィリアムズ等の苦闘があり、歴史的にもアフリカ系によるクレオールとインド系住民との葛藤があることを明らかにしている。「第二部 民衆の心象風景」では、島に生まれ育ってノーベル文学賞を受けたインド系人ナイポール、英領西インドのバルバドスに生まれトリニダード・トバゴで教職に就いたことあるアフリカ系のラミング、同じくインド系であるがキリスト教に改宗した家系のセルヴォンの3人の文学作品にみる、インド系社会とクレオール化したアフリカ系との意識の差異を考察している。しかし、トリニダード・トバゴを観光のみならず有名にしているのは、カーニバルの祝祭とそこで詠唱的語りから発展したカリプソ、スチール・ドラムであろう。カトリック系白人の祭りを、奴隷制廃止後にアフリカ系住民が真似て次第に一般化し、ついにインド系住民も参加するようになったことが人種間の反目から和解にもつながり、いまやカーニバルは多文化トリニダードの表象になっている。

英国植民地史の研究者による、日本ではほとんど知られていないトリニダード・トバゴの貴重な研究書であり、有用な解説書である。

(大阪大学出版会2012年12月239頁3200円+税)