地球時代の日本の多文化共生政策 −南北アメリカ日系社会との連携を目指して - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

地球時代の日本の多文化共生政策 −南北アメリカ日系社会との連携を目指して


南北アメリカの日系移民を文化を運ぶ人と捉え、彼らの移動、漂泊と定住、そのトランスナショナル・エスニシティを考察することで、地球時代の日本人の海外発展のあり方の中から多文化共生政策を提案しようとする研究書で、著者の名古屋大学に提出した博士論文である。

第1部で日本とラテンアメリカ関係 145年の歴史的背景をみて、第2部では各地の日系社会の概要と組織的形成の中心になったパンアメリカン日系協会と海外日系人協会の歴史、果たした役割を紹介している。第3部では日本の多文化共生概念の発生、事例を述べた後、多文化共生政策の決定過程を検証し、その問題を挙げている。特に 1990年の「出入国管理法」の改訂がもたらした南北アメリカの日系社会の大きな変化、日系人の流入増大によって日本社会も多文化共生を考えねばならなくなったこと、その中でインターネット時代の組織と機能を活かしたネットワーク作りなどを挙げて、日本での多文化共生による新たな文化・社会の創造を目指す試みが進んでいることを論述し、個人・家族・地域社会・国民国家・国際レベル、そしてインターネットレベルそれぞれでの 21世紀の日本の多文化共生政策を提言している。

(浅香 幸枝明石書店2013年 3月251頁2600円+税)