『皇帝銃殺 -ハプスブルグの悲劇 メキシコ皇帝マクシミリアン一世伝』 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『皇帝銃殺 -ハプスブルグの悲劇 メキシコ皇帝マクシミリアン一世伝』

オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ一世の弟として生まれたフェルディナント・マクシミリアン(愛称マックス)は次男であるがゆえに果たせない君主への羨望の念を、ベルギー王女で妻となったハルロッテとともに、フランスが介入して統治に手こずっているメキシコにナポレオン三世の唆しと周囲の政治的思惑からの甘言に乗って、フランス軍とベニート・フアレス大統領支持の共和国軍と内戦状態のメキシコに皇帝として赴く。マックスなりの理想にもえて種々の改革案を実施しようとするが、身内や保守・自由派、占領軍の高官の間の抗争やカトリック教会の抵抗、欧米諸国の外交利害に揉みくちゃにされて挫折が続くが、それ以前にマックスも欧州諸国政府もメキシコの実態についての無知・無理解は度し難く、内戦は泥沼化してついに庇護を約束していたフランスは派遣軍を撤退させ、皇帝軍は独力で圧倒的多数の共和国軍と直接対峙して惨敗、マックスは捕らわれて形ばかりの軍事裁判で死刑判決をうけ1867年銃殺される。メキシコ皇帝としての在位はわずか3年、37歳の短い生涯だった。

ドイツ・オーストリア文化史を専攻する歴史学者による、欧州で広大な版図に多民族を支配してきたハプスブルグ家の黄昏期に長兄皇帝と次男の兄弟・その妻たちの確執、欧州列国間の熾烈な外交駆け引きに、マックス夫妻の栄光への野心が翻弄されて悲劇の最後に至るまでを綴った歴史だが、メキシコ革命史には立ち入ることはせず、あくまで欧州史の視点からマックスのメキシコ皇帝として終わるまでの事跡を描いている。

(菊池 良生 河出書房新社(文庫) 201年1月 367頁 1,200円+税)