2016年1月15日、佐藤博史前駐キューバ大使をお招きし、米州開発銀行アジア事務所を会場に講演会を開催しました。昨年、54年ぶりに米国との国交正常化を果たしたキューバへの関心は高く、定員を超える約60名近い方にご参加いただきました。
米国のキューバ系住民の間で反カストロ感情が緩和していることや、キューバとの国交正常化賛成派が米国民の6~7割に上ること等、米国とキューバというタイムリーな話題についてお話しいただいた後、日本とキューバの関係として、ゼロに等しかった貿易が、貿易保険引受の再開を契機に2013年から徐々に復活しつつあること、支倉常長キューバ上陸400周年イベントで自衛隊の艦船が初めてキューバに入港したこと等をご紹介いただきました。
米国との国交正常化の今後の課題については、「両国間には経済規模の圧倒的な違いなど問題が多く、キューバ側は米国に飲み込まれるのを恐れている。国民の支持が厚い医療費無料、治安の良さ等、キューバの良さを残しながら米国との国交正常化をどう進めるかが大きな課題になる。ただし、キューバは民意を気にする共産主義国家であるため、経済等の改善を求める民衆が国交正常化を後押しするのではないか」と述べられました。
2015年5月に岸田外務大臣がキューバを訪問した際、ごく一部の要人としか会わないフィデル・カストロ前議長とも会談したことに触れ、さらに日本の今後の役割として、「米国とキューバの間に立つこと、相手国を尊重する日本の企業文化を広めること、キューバとの関係強化は国内の反対も少なく国益にもつながる」と、述べられました。
講演会後半では、参加者とともに質疑応答が行われ、2018年のラウル・カストロ議長の後継者、米大統領選の影響、党大会について、米州ボリバル同盟(ALBA)国との関係、さらに韓国・北朝鮮や中国との関係等、多岐にわたってお答えいただきました。2015年のフィデル・カストロ前議長との会談について問われると、「一人で立つこともでき、健康状態は良好に見えた。日本のKOMATSU製トラクターの話から、核兵器問題まで話された」と、当時の様子を語ってくださいました。
講演者:佐藤博史前駐キューバ大使