紀元前1000年から16世紀まで中米で独自の石器の都市文明を築き、建築・文字・暦・算術・天文学を高度に発達させた、旧大陸の四大古代文明に匹敵するマヤ文明を知る上で有用な事典。
第1部ではマヤ文明の特色、現代の考古学から解明された実像を解説し、第2部で事典として地理・環境、交通・交易、暦・算術・天文学、文字、歴史を事項別に、古代マヤ社会の諸王朝・都市を遺跡別に、当時の戦争の実態、神殿ピラミッドはじめ優れた石造建築、日常生活道具や生活、儀式・行事、世界観と神話・宗教、美術・工程、生業と食料等作物をそれぞれ事項・品目別に解説している。第3部は現代に生きるマヤの人々の概況を現代史を交え紹介し、スペイン征服者・探検家のマヤ文明観と科学的な考古学、日本人とマヤ文明研究の関わり、歴史教科書や“謎”を強調する見方の誤り、マヤ文明の盛衰の歴史からの教訓を説いている。この種の事典では共同執筆がほとんどだが、一人の研究者が自身の研究成果を基に一貫した史観でマヤ文明を解説した労作。
〔桜井 敏浩〕
(東京堂出版 2015年11月 336頁 2,800円+税 ISBN978-4-490-10872-9 )
〔『ラテンアメリカ時報』2015/16年冬号(No.1413)より〕