メキシコでアステカ文明に出会い、アステカ人という宗教的人間を理解したい、その宗教現象を解釈したいと学問の道に入り、16世紀前後のスペイン語、アステカ人が使っていたナワトル語の文書、考古学的遺物、絵文書、現代メキシコ先住民の民族誌的資料を駆使して、アステカ人の宗教的伝統の核心といえる生贄の祭祀を解明しようとしたもの。
14世紀初頭にテスココ地方(現在のメキシコ市とその周辺)に定住し、16世紀にスペイン人によって征服されるまで、メキシコの南半分とその南のマヤ地域の一部を支配したアステカ王国の宗教伝統、行事と宇宙論、神々に血を捧げるというアステカ供儀の実相、神々、太陽、月、大地から血を頂くという供儀による宇宙の生命力の循環、咲き誇る花に神々による創造、生命の象徴を見たこと、アステカ宗教を理解するための鍵である花/開花が「笑い」に強く結びついていること、神の操り人形となって戦場でも歌い踊りながら勇猛に死を恐れず戦う戦士たちを、ナワトル語古代詩やスペイン征服者の遺した文献の解明をまじえ、アステカ人の宗教的実存に共感しつつ接近し、それらを言葉で列記することを試みたものである。
〔桜井 敏浩〕
(刀水書房 2015年8月 202頁 2,200円+税 ISBN-978-4-88708-423-0 )