『創造か死か -ラテンアメリカに希望を生む革新の5つの鍵』 アンドレス・オッペンハイマー - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『創造か死か -ラテンアメリカに希望を生む革新の5つの鍵』 アンドレス・オッペンハイマー


本書はマイアミ・ヘラルド紙の名物コラムニストでピューリッツアー賞受賞者、米州で絶大な人気を誇るジャーナリストのアンドレス・オッペンハイマーの『米州救出』(2011 年 時事通信社)、『ラテンアメリカの教育戦略』(2014 年 時事通信社)に続く、ベストセラーの初の邦訳。

21 世紀の発展の柱である革新と創造につき、米州での驚くべき現状につき紹介している。マイクロ・ソフト創始者ビル・ゲイツや冒険企業家リチャード・ブランソン、反転学校のサルマン・カーン、ペルー革新料理人アクリオ、革新的サッカー監督アルゼンチン人グアルディオラ、社会的起業家チリ人ゾレッジー、コンピューターの認証文字発案者グアテマラ人フォン・アン等世界的革新者達とのインタビューを通じ、その革新の秘密を明らかにしてゆく。 そして、なぜ中南米にビル・ゲイツやステイーブ・ジョブズが生まれないのかにつき考察し、中南米の潜在的創造力と革新を開花させるための5 つの秘訣(失敗を容認する革新文化等)を引き出す。本書は、“創造と革新”を切り口に、北米から見た米州の知られざる状況を複眼的視点から紹介しており極めて興味深い。

著者の米州に関する考察は、これまで実にラテンアメリカの現実に驚くほど当てはまってきた。過去に執着し未来を見ず、国威発揚のために国家の英雄の墓を掘り起こし、イデオロギーに固執し、教育を国際化せず、天然資源に依存し続けるラテンアメリカの国々は、教育、科学技術、革新の知識経済時代にますます後れを取るだろうとの考察は、現在凋落傾向にあるラテンアメリカの強権イデオロギー的な国々にとっては、まさに現実のものとなっている。本書は、ほぼ15 年毎に左派と右派、自由市場経済と国家主導経済との間を振り子のように揺れ動くラテンアメリカが真に発展の地域となるための多くのヒントと助言を提供している。
〔訳者 渡邉尚人〕

(渡邉尚人訳 明石書店 2016 年4 月 383 頁 3,800 円+税 ISBN978-4-7503-4340-2 )

〔『ラテンアメリカ時報』2016年夏号(No.1415)より〕