日本の文化・歴史を国際的な連携・協力の下で研究する大学共同利用機関である国際日本文化研究センター(日文研)が、内外研究者との移民研究の一環として日系文化を幅広く共同研究した成果を纏めたもの。
第Ⅰ「記す」は自分の半生や記憶を移民史に繋ごうとしたアルゼンチン、ブラジル、チリ等4人の文芸人について、第Ⅱ部「伝える」は日本からの出版物輸入や往来から思想・経験を伝える媒体・作家等を、第Ⅲ部「詠む」は日本語文学の特徴である川柳・短歌・俳句を、第Ⅳ部「競う」ではブラジルの野球、ペルーの運動会等のスポーツ行事を、第Ⅴ部「交わる」はハワイ音楽、日系人とマンガを、第Ⅵ部「渡る」は移民という空間移動において、沖縄系ブラジル人の三線、呪術的宗教、ブラジルでのデカセギ者向け代理店と邦字新聞社、帰国デカセギ者のリマ日系社会での再適応とその影響をそれぞれ論じている。
戦前海外へ渡った移民総数はその間の総人口のほぼ1%に過ぎないが、その数百万人の子孫の存在は日本史、日本人史、文化研究で取り上げるべきとの24人の寄稿者に共通する確信が、書名の「編み直す」に込められている。
〔桜井 敏浩〕
(ミネルヴァ書房 2017年3月 427頁 8,000円+税 ISBN978-4-623-07883-7 )
〔『ラテンアメリカ時報』2017年夏号(No.1419)より〕