『ゲバラの実像 -証言から迫る「最期のとき」と生き様』 平山 亜理 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ゲバラの実像 -証言から迫る「最期のとき」と生き様』  平山 亜理 


エルネスト・チェ・ゲバラが1967年10月にボリビアでゲリラ活動の末ボリビア軍に捕らえられ処刑されて今年で半世紀になるが、世界で、日本で相変わらずゲバラに関する出版物が刊行されている。本書は、キューバ系米国人でCIA(米国中央情報局)の工作員として、ゲバラの最期に立ち会ったフェリックス・ロドリゲス、ボリビア軍の討伐隊長だったガーリー・プラド、ゲバラと最後まで行動をともにしてチリに脱出して生還したアフリカ系キューバ人のポレボにインタビューし、1959年7月のキューバ政府派遣親善使節団長として訪日時の広島訪問、ゲバラの初めてのキューバ国外での左翼支援のためのコンゴでの戦闘参加と挫折を辿っている。

ゲバラの命日に彼が殺された村でいとなまれた46回目の追悼式で末弟から聞いた少年時代、長兄エルネストへの思いと彼の死後アルゼンチンの家族への軍事政権の迫害、1953年にボリビア、エクアドルを旅行した幼馴染みの話し、その後オートバイで南米を一緒に回ったアルベルト・グラナードの長男から父とゲバラの旅の思い出、ゲバラの二度目の妻との間に生まれた娘アレイダに父親像を語らせている。最後に医師であったゲバラが描いた理想の遺産として、キューバがアフリカやハイチに送った医療団、チャベス政権ベネズエラとキューバが組んで各地で展開した眼科治療作戦のアルゼンチンはコルドバのチェ・ゲバラ眼科センター訪問記、ゲバラの顔を世界で有名にした写真「英雄的ゲリラ」を撮影したキューバ人カメラマンの話し、ゲバラに見せられた日本の作家、評論家などの紹介と、ゲバラについて盛り沢山な「証言」を集めている。

著者は朝日新聞ロサンジェルス兼ハバナ支局長(出版時)で、2015年5~7月に朝日新聞に連載したルポに加筆したもの。

〔桜井 敏浩〕

(朝日新聞出版 2016年2月 231頁 1,400円+税 ISBN978-402-251361-8 )