【日時】2017年11月13日(月) 15:00~16:30
【場所】フォーリンプレスセンター会見室
【講演者】
■高田 茂樹氏 国際協力銀行 ニューヨーク駐在員事務所首席駐在員
■西尾 明美氏 ㈱日本貿易保険 審査部カントリーリスクグループ調査役
【参加者】約45名
今回は、ラテンアメリカにおける貿易・事業投資に対する支援事業を行っている二つの金融機関から支援事業の内容と最近の事例等についてお話しいただきました。概要は以下の通りです。
国際協力銀行(JBIC)の「ラテンアメリカにおける取り組み」
1.ラテンアメリカ諸国の政経事情概観
2014年以降、一次産品価格の下落が続いたが、16年に底を打ち、緩やかに回復している。ラテンアメリカ経済は一次産品に依存しており、価格下落により経済が低迷し、マイナス成長に陥った国も複数ある(ベネズエラ、エクアドル、ブラジル、アルゼンチン)。
各国で政権に対する支持率が低迷している中で、2018年は選挙の年になる。ポピュリズ
ム政権は後退し、ビジネス・フレンドリーな環境が整いつつあり、JBICの支援し易い環
境になってきた。経済回復の注目国はコロンビアとペルーである(チリは先進国とみなし
ている)。データからは窺い知れないラテンアメリカでの中国のプレゼンスの大きさがあ
る。
2.JBICの取り組み
JBICの地域別承認額は年次により異なる。2016年、ラテンアメリカの比率は全体の4%と小さかったが、残高ベースで見ると17%と、地域による偏りはなく、ほぼ均等の割合になっている。ペルー・チリの銅鉱山、ブラジルの油田など、ラテンアメリカは資源関連プロジェクトが多い。インフラ・プロジェクトはアジアに比べ少ないが、ブラジル、メキシコ、アルゼンチンなど、今後、案件の増加を予想している。特に、アルゼンチンは国際金融市場に復帰したことでJBICの新たな枠組みである「特別業務」の対象となった。新規事業開拓の後押しになるものと期待している。
日本貿易保険(NEXI)の最近の南米地域への取り組み
1.NEXIについて
NEXIは通産省貿易保険課を前進とする、日本政府が全額出資する特殊会社で、輸出入や海外投融資などの対外取引に伴う中・長期の非常危険や信用危険を補てんする保険を提供している。リスク金額が巨額というのが、政府が関与する歴史的な背景にある。大企業に対しては直接引受を実施しているが、中小企業は地銀や信用金庫を通している。昨年から、農水産事業者にも引受を拡大している。2015-16年実績は輸出額の減少により前年比減だったが、2016年の海外事業資金貸付保険は前年比増となった。いずれの実績もアジアの比率が高いが、2016年度の非常危険事故は、アフリカ(ナイジェリアなど)の割合が高く、南米(特にベネズエラ)がそれに次いでいる。
2.中南米向け事業
2016年度の南米の比率3.8%に対して中米の比率は9.9である。同年キューバ向け引受を拡大した。2008年度はブラジルが62%と圧倒的な割合を占めていたが、2016年度は多様化し、コロンビア、ブラジル、アルゼンチン、ペルー、チリの順で、中米はコスタリカ、ジャマイカ、グアテマラの順となっている。
2016年3月に、財政改善見通しと為替規制撤廃によりアルゼンチン向け引受再開を再開した。逆に、2015年以降、ベネズエラは外貨事情の悪化のため、プエルトリコはデフォルト宣言によりそれぞれ引受停止としている。
引受の具体例としては、2050年までに再生可能エネルギー利用率50%を目指すチリ向けの太陽光発電プロジェクト、アルゼンチン向け自動列車停止装置更新案件(マクリ政権誕生後の初の案件)、同国農協(ACA)向け長期運転資金(大豆とトウモロコシの一定量を日本に輸出することが条件)などがある。
最後に、パナマのカントリー・リスク・レーティング、JBICの「特別業務」とOECDガイドラインとの整合性などについての質疑応答があった。
【配布資料】
なお、本講演の説明資料はラテンアメリカ協会のホームページに掲載される(会員限定)。
■「ラテンアメリカにおける取り組み」(PDF)
国際協力銀行(JBIC) 作成
■「NEXIの最近の南米地域への取り組み」(PDF)
日本貿易保険カントリーリスクブループ(NEXI) 作成
高田国際協力銀行 ニューヨーク首席駐在員
西尾日本貿易保険 審査部調査役
会場の様子