ラテンアメリカは世界で最も社会的格差がきわだっているといわれるが、それを生み出した「歴史の遺産」の項では植民地時代から独立戦争を経て国民国家の成立、世界経済への参入、革命モデルで、「広大な土地、資源、入植」では後世に暴力をともなう問題の根源となる土地所有制、天然資源、入植の形態、都市化、「発展-安定と不安定」ではそれらを合わせもつ経済活動、格差・不均等、経済危機、貧困との闘い、インフォーマル経済と持続可能な開発を紹介し、「文化と革命」では“インディオの覚醒”から多文化政策への発展、社会運動から各所での権力掌握、ゲリラ・マフィア、犯罪、カトリックの衰退と他宗教の隆盛、芸術の政治参加を、「政治体制」では、ポピュリズムや権威主義、民主主義への移行・政治参加、左派政権の試行錯誤から政治への失望と政治不安を、「ラテンアメリカと世界」では地域統合のステップと形態、合法/違法取引、困難な米国との関係、ラテンアメリカ征服に乗り出す中国、対欧州関係、地域大国が世界の主要国入りするブラジルと、長い孤独の後でオバマ米政権の政策変更でそれが終わろうか見えるキューバなど、ラテンアメリカの社会・経済・政治の様相を120以上のカラー地図やグラフで示している。
各地図や図表、グラフはそれぞれのテーマをより詳しく知ることができるように工夫がこらされており、他国や他地域とまた時系列で比較して理解を深めることで、現在のラテンアメリカの基本的な知識を一覧で見ることができる。
〔桜井 敏浩〕
(太田佐絵子訳 原書房 2017年12月 166頁 2,800円+税 ISBN978-4-562-05428-2 )