前作『ポーラースター -ゲバラ覚醒』(2016年6月刊。本誌2016/17年冬号で紹介。
https://latin-america.jp/archives/21985 )に続く、ぼく(エルネスト・ゲバラ)はブエノスアイレスを発ち、1952年4月にボリビアのラパスでパス=エステンソロ(後に大統領)、シレス=スアソ等によるボリビア革命の光と影を見た後ペルーへ入る。リマでコロンビア大使館に亡命中のアプラ党(アメリカ革命人民同盟)アヤ=デラトーレ党首と会い話していくうちにグアテマラ行きを薦められる。まずエクアドルへ向かい、グアヤキルから船でパナマ運河を通過しコロンで下船するが、熱帯地域での特殊部隊要員・諜報員を養成する米租借地にある米州学校へ連れていかれ、トリホス少尉(後の国家警備隊最高司令官、パナマの真の独立を目指し運河返還を実現する)と副官のノリエガ(CIAとの二重スパイ、後に独裁者となるが米国の侵攻で犯罪者にされる)から3か月間軍事訓練を受ける。卒業後軍備を放棄して永世中立国を宣言したコスタリカに行き、フィゲレス大統領夫人のサロンに出入りし、ここで初めてキューバで武装蜂起し失敗して捕らえられたフィデル・カストロの事を知る。ベタンクール元ベネズエラ大統領にも会い、彼から別れの時に「またな、チェ・ゲバラ」と声をかけられ、チェ・ゲバラとしてコスタリカを離れニカラグアに入国する。ここでは米国海兵隊の侵攻に抵抗したサンディーノを討伐したソモサ親子の独裁ぶりと抑圧を目の当たりにする。次いでホンジュラス、エルサルバドルを通りついにグアテマラに到達する。市民病院の仕事に就いたが、アルベンス大統領がユナイテッド・フルーツを敵に回した農地改革に対する米国の反撃が始まり、アルベンスは辞任に追い込まれ、軍人による抑圧の政治に戻る。ぼくは、カストロの会うことになるメキシコに渡る。
300冊近いラテンアメリカ関係邦文図書・文献を駆使して、ラテンアメリカ現代史に登場する有名な政治家、文学者、軍人などを些かご都合主義的であるが綺羅星の如く登場させ、登場人物に往訪国の近現代史の蘊蓄を語らせ、ゲバラの旅路を辿ることで、中南米の国々の当時の事情とキューバ革命前夜の国際情勢への理解を深めさせながら一気に読ませる。
〔桜井 敏浩〕
(文藝春秋 2017年10月 510頁 1,850円+税 ISBN978-4-16-390729-1 )