【日時】2018年7月12日(木)
【場所】虎ノ門法経ホール
【講師】畑中龍太郎 前駐コロンビア日本大使
【参加者】82名
◇コロンビアは歴史的な転換期にあり世界的な注目を集めている。6月の大統領選決選投票で当選したイバン・ドゥケ氏(41歳)はウリベ前政権で大統領の国際顧問を務めた経歴を持つ。当選後、ドゥケ氏はコロンビア国民に対し、分断ではなく団結を呼びかけ、汚職撲滅や治安維持を重視すると述べた。今年3月に元左翼ゲリラFARC(コロンビア革命軍)も合法政党として選挙に参加することになった議会は、上下院とも8割がドゥケ氏を支持しているとされている。ただ、ドゥケ氏は選挙戦中、一貫して和平合意の見直しを明言しており、大統領就任後の対応を注視する必要がある。また、新政権に顧問として参加すると言われているウリベ元大統領の政権内の役割次第では、新政権の不安材料になりかねない。
◇経済は、2016年の税制改革による消費の落ち込み、和平プロセスによる政治の不確実性への心配もあり、2017年のGDP(国民総生産)成長率が1.8%に下落した。コロンビア政府は原油の国際価格に左右される経済からの脱却を図るために農産物等の輸出増に取り組んでいる。自由貿易協定は15カ国・地域と発効済み。TPP11への加盟に向けても動いている。日本とのEPA(経済連携協定)交渉は5年を超えて継続中であるが、コロンビア側の農産物の輸出確保が懸案の一つと理解している。ただ、いいとこ取りだけの交渉姿勢では限界があるとの理解も必要と考えている。インフラ計画では道路、港、空港、鉄道への投資プロジェクトが進行。中でもブエナベントゥラ港のアクセス改善はアジアとの貿易において重要である。失業率は9%台と高く、最低賃金も上がらないため国民の不満の声は大きい。これが任期を終えるサントス大統領不人気の原因とも言われてきた。
◇日本との関係では2014年に安倍総理がコロンビアを訪問。2016年には地雷除去機材の供与を閣議決定し、2017年には租税条約を実質合意した。進出日系企業数は90社ある。また、日本の文化・経済・学術に関する情報発信拠点として「日本センター」を設置することとなり本年12月に開所が決まっている。
◇コロンビアは地政学上の強みや若年層の多さが魅力で伸び代は大きい。今後は和平の実現と定着が重要になる。サントス政権はFARCとの内戦に終止符を打ち和平合意を締結。OECD(経済協力開発機構)への正式加盟等で国際的な知名度を上げた。国民の不満があることは事実だが、評価されるべき大統領と考える。
講演後に質疑応答が行われ、①日本・コロンビアEPAの具体的品目、②環境対策、③新政権での国内分断の不安といった質問が出された。
【配布資料】
なお、本講演の説明資料はラテンアメリカ協会のホームページに掲載される(会員限定)。
■「“最新”コロンビア事情(政治、経済、二国間関係等)―「過去」・「現在」・「未来」―」 (PDF)
■「コロンビアの魅力と可能性 日・コロンビア関係発の好機」(PDF)
■「“最新”コロンビア事情(政治、経済、二国間関係等)―「過去」・「現在」・「未来」―」(講演メモ)(PDF)
畑中龍太郎前駐コロンビア大使 作成
畑中龍太郎 前駐コロンビア日本大使
会場の様子