【演題】「グアテマラの現状、課題と展望」
【日時】2018年8月9日(木)
【場所】日比谷国際ビルB1 会議室
【講師】古谷朋彦 駐グテマラ特命全権大使
【参加者】35名
●グアテマラは1996年まで36年間続いた内戦の歴史を持つ。内戦終結後も続いた無処罰状態を打開するため、2006年に国連とグアテマラ政府は「グアテマラにおける無処罰問題対策国際委員会(CICIG)」を設立して対策に乗り出した。コロンビア人のベラスケス委員長はテルマ・アルダナ前検事総長とともに汚職を摘発し、現大統領の不正選挙資金問題に切り込むなど、最も活発な政治アクターとなっている。ベラスケス委員長は右派から内政干渉との批判を受け、モラレス大統領から国外追放されかけたが、憲法裁判所の判決により追放は無効となった。5月に就任したポラス検事総長の今後の動向を注視している。
●政治制度は大統領制で再選不可。2015年の選挙で当選した元コメディアンのモラレス大統領の任期は2020年まで。来年6月の大統領選挙の候補には、汚職追及で人気のテルマ・アルダナ前検事総長や、過去3回大統領選に出馬した右派のアレハンドロ・ジャマティ氏、コロン元大統領の元夫人サンドラ・トーレス氏らの名が挙がっている。
●中米地域の経済社会統合のため1991年に中米統合機構(SICA)が設立された。加盟国はエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、ベリーズ、ドミニカ共和国の8カ国。国際関係では、グアテマラは米国に追従して在イスラエル大使館をエルサレムに帰還させるなど、トランプ政権による当国への影響は大きい。アジアとの関係では、台湾との関係を重要視。中国とは外交関係はないが、経済面で相当のプレゼンスを有する。北朝鮮と国交があるが、大使館は置いていない。
●グアテマラの一人当たりGDP(国内総生産)は4,466ドル。1月130ドル以下で生活している貧困層が国民の59%(貧困率)と高く、格差が大きい社会である。若年層が多く、先住民割合は約4割。米国には200万人以上のグアテマラ移民がいると言われ、彼らからの送金はGDPの1割に上る。5月には米政府の「ゼロ・トレランス政策」により親から引き離された移民の子供が注目を集めた。米国は不法移民の流れを止めるため「中米北部3カ国繁栄のための同盟計画」を掲げ、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラスに支援を行っている。
●実質GDP成長率は3~4%前後を維持。産業は、コーヒーなどの農業のほかに,米国の有名ブランド向けにマキラ(非課税地域)で製造される縫製工場の成長が著しい。米国向けコールセンターなどサービス業も伸びている。一方、鉱業はカナダ資本のサンラファエル鉱山の採掘停止により2017年は大幅なマイナス成長。2016年の貿易主要相手国は輸出入共に米国が3割以上。アジアでは中国からの輸入が米国、メキシコに次いで3位。日本は輸出入共に10位。中南米を中心に複数国とFTA(自由貿易協定)を締結し、韓国とは現在交渉中。
●日本との関係は良好で、日本は有償および無償の資金協力や技術協力を行っている。フエゴ火山噴火の際にはJICA(国際協力機構)が援助を行った。ほかにJAXA(宇宙航空研究開発機構)の発展途上国等の宇宙関連技術向上への貢献を目指すプロジェクトで、JAXAの宇宙ステーションに搭載する超小型衛星にグアテマラ・デル・バジェ大学の衛星が採用された。
講演後に質疑応答が行われ、①グアテマラ国内の主要課題、②政治と財界有力ファミリーの関係性、③労働者の抗議運動、④防災面での日本の協力、⑤治安や反社会勢力マラス等について質問が出された。
【配布資料】
なお、本講演の説明資料はラテンアメリカ協会のホームページに掲載される(会員限定)。
■「在グアテマラ日本国大使館 ブリーフ資料」(PDF)
在グアテマラ日本国大使館 作成
古谷朋彦 駐グテマラ特命全権大使
会場の様子