グアテマラは1996年の和平協定により36年間に及ぶ陰惨な内戦が収束され、その後の混乱期を経て近年急激な変貌を遂げているが、マヤ文明、スペイン植民地時代、近現代を経て現代の政治・経済の状況、紛争の後遺症を越えて先住民等との多文化主義、宗教・伝統・言語・文化・芸術という視点から、グアテマラを総合的に理解できるように工夫された総合的な解説書。
マヤ以来の宗教、文化、言語など伝統、歴史的背景を知るとともに、近年のプロテスタントの布教の目覚ましい拡大とカトリック改革派の対抗、殺人犠牲者数で世界トップ10に入る治安悪化の主因の一つである青少年組織犯罪グループ「マラス」対策、米国への移民の増大、マキラドーラの発展と韓国系アパレル工場などで見られる低賃金等の労働問題、台湾と外交関係を維持する中で中国経済のプレゼンスの拡大など、新たな注目すべきテーマを加筆している。巻末には16頁にわたる内外の参考文献リストも付けられている。
エリア・スタディーズ・シリーズ164点のうちラテンアメリカ19点中の最新刊で、国際関係、政治経済、歴史、民族学、考古学等の多岐な分野の研究者や在住経験がある現地事情に通じた35名の執筆者を動員して、2006年に出版された『グアテマラを知るための65章』を現状に即して追加補足したもの。
〔桜井 敏浩〕
(明石書店 20018年7月 384頁 2,000円+税 ISBN978-4-7503-4689-2 )
〔『ラテンアメリカ時報』2018年秋号(No.1424)より〕