エジプトを中心としたアフリカ大陸(古代エジプト学の大城駒澤大学教授)、メソアメリカ(マヤ文明学の青山教授)、南米(アンデス考古学の関国立民族学博物館副館長)の3地域の考古学者が、時間と場所を越えて網羅的に世界各地に点在するピラミッドの詳細な情報を集大成した事典。
メソアメリカのピラミッドは主に宗教儀礼を執行する神殿であり、エジプトのそれとは社会的機能や意味はまったく異なる。南米では古代アンデス文明が成立した地域に限られ、現在のペルーとボリビアの一部に遺る建造物はエジプトのように先端が尖った角錐状ではなく、石やアドベ(日干しレンガ)を積み上げた基壇の上に造られた面積が比較的大きい頂上部の小型基壇上の空間では儀礼が行われた。メソアメリカの60の神殿構造物、アンデスの50の基壇、さらにその他北米、日本、その他の地域のピラミッドについて、それぞれまず場所・座標・規模・建造年代を示し、その歴史、注目すべき構造物、意義を写真、平面図とともに解説している。
ピラミッドについては、設計図すら遺っておらず、ピラミッドの謎の解明についての挑戦が続いている。本書は最古のピラミッドを含む古代エジプトのピラミッドの謎を解くヒントを得ること、そして世界中に点在するピラミッドから人類の普遍的な嗜好と英知を知ることを目的にした、我が国初の「ピラミッド学」書と言える画期的な出版である。
(柊風舎 2018年12月 639頁 15,000円+税 ISBN978-4-86498-064-7)
〔『ラテンアメリカ時報』2018/19年冬号(No.1425)より〕