グローバル化の進展にともない国際社会で共通の規範としての移行期正義(ジャスティス)が形成されるプロセスとそのダイナミズム、貧困、紛争、平和などのローカリティの事象が現場でどのような作用を起こしているかを具体的事例によって描きだそうとしている。
全11章のうち、第1章でペルーの20世紀末のテロ組織「センデロ・ルミノソ」鎮圧の過程での暴力を調査した「ペルー真実和解委員会」で明らかになった先住民の大規模虐殺、その被害者を埋めた秘密墓地発掘調査などの事例から説き起こし、ローカリティを代表/代弁するのは先住民か?と提起している。第2章ではアルゼンチン等南米で輩出した軍政の時代の国家テロについての民政移管後の真実委員会の追求が国際社会に正義を求める動きをもたらしたこと、第5章ではチリの先住民マプチェの自決権要求と国家の開発促進意図との間の緊張関係を解析している。
著者等をはじめとする人類学者を中心に、国際法、政治学、国際関係論、社会学、歴史学の専門家の共同研究による真摯な解明の試みである。
(昭和堂 2019年2月 350頁 5,400円+税 ISBN978-4-8122-1804-4)
〔『ラテンアメリカ時報』 2019年春号(No.1426)より〕