連載エッセイ12:チリ人男性と結婚する前に知っておいたほうが良いこと - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ12:チリ人男性と結婚する前に知っておいたほうが良いこと


連載エッセイ12

チリ人男性と結婚する前に

知っておいたほうが良いこと

執筆者:打村明・上杉リディアゆき(南米ニュース)

(この記事は、南米ニュースに掲載された打村明氏と上杉リディアゆき氏によるもので、特別に転載許可をいただきました。)

チリに戻ってもう7年が経ち、子供が3人いる私たちとの元にチリ人男性と恋愛や 結婚をしている日本人女性から夫婦間のことや子育て、文化習慣、家族関係の違いなどに ついて相談を受けることが年々増えています。仕事面でも婚姻、離婚に伴う書類の翻訳や 簡単な電話での通訳の手伝いなどにも関わってきました。

その数々の相談の中で共通する要点を今回のコラムでお話ししたいと思います。
チリ人男性はジェントルマンで人懐っこくって面白いという印象を受ける。 チリ人男性にだけではなく南米の男性というのは陽気な性格で、又小さい時から女の子には優しくという育てられ方を埋め込まれているので紳士的な立ち振る舞いが自然とできる大人の男性が多いです。ソフトなボディータッチも日常のコミュニケーションの中で当たり前のことなのでそういう対応に慣れていない女性はその人とお付き合いをしたらずっとそうなのだろうと勘違いすることがあります。 そこでときめいても冷静にその人の中身の部分を見るように心がけたほうが良いです。

彼女になっても尽くし過ぎないこと 彼女=ママにはならない。

チリでは男の子を小さい時から甘やかしすぎる傾向があります。その裏にはフェミニズム運動も関係しているかなと思う部分もあり、「女性は強くなんでもできるけど男はダメな生き物だ」とどこか決めつけているところもあります。そのため男の子には小さい時から何かの責任を果たす、又は果たしてくれるであろうという期待をあまりかけない、そしてかけなくとも社会に出たときには女性よりも高給料を得られるという差別感もあるため、なぜか子育ての部分から男の子は生ぬるくチヤホヤされる傾向があります。
日本人女性は甲斐甲斐しく食事の支度や部屋の掃除や洗濯や相手の時間に合わせて相手が好むように環境を整える傾向があります。しかしそれに彼を慣らせてしまうと都合の良いママのような役割を果たしてくれる彼女という位置付けになってしまい、結果的には女性の負担だけが多くなってしまう。何もしない彼氏になってしまいます。 自分のことや家事を平等にやって行くためには最初から手を入れ過ぎずに相手がやるまでほっとくのも必要です。 誰かがやってくれるだろうという責任逃れをする感覚がチリ人には少なからずともあるのでそれを増大させないためには女性側の「手伝わない」という姿勢が必要になります。

チリ人は家族付き合いがとても濃い

職場でも家族行事を優先しやすい場合や家族イベントが盛りだくさんで良いことではありますが、夫婦間のことや子育てにも家族がズケズケと入ってくる一面もあります。チリの家族構成は表向き男性主導のように見えても明らかな母系家族であり家族の中で裏の主導権を握っているのは女性たちです。そのため、母親や姉妹達の実権は強くカップル間のことや子供のしつけ、教育方法に関しても第二の母親のように色々意見してきます。チリ人男性とおつきあいする際にはチリ社会の家族のあり方が上記のようであることを知っておくことが重要だと思います。

お金に関して

基本的にチリではお財布は別々です。金銭感覚がゆるゆるの人、無計画、借金だらけの人が珍しくありません。 自分の給料の使い方に関してとやかく言われるのをとても嫌う場合も多いです。ですのでその部分の話し合いをオブラートに時間をかけてして行く必要があります。また、相手が変わることを願うよりも、自分のお財布の管理は自分でしっかりしておいたほうが無難かもしれません。 結婚する際にも財産の扱いに関してはその場で選択する必要があります。それに関してはこちらの別記事をご覧ください:チリでの婚姻手続きの時に行う「財産制度の選択」とは

子供とチリ国外に出る場合

チリに限らず南米のほとんどの国では子供を連れて国外に出る場合には父親の承諾書が必要になります。たとえ母親が一緒に出る場合でも、物を言うのは父親の承諾書です。それが無い限り空港から外には絶対に出られません。承諾書の他にも出世証明書や家族手帳(チリで婚姻手続きをしている場合)の提示が必要になります。中には離婚ということを想定して出産を日本で里帰り出産をする人もいました。ハーグ条約でもめた際に出生地に子供が戻ることになるからです。

子供の育て方での衝突

男性は子供が生まれても父親脳になるまでに時間がかかるものです。ましてやそれが二つの異なる文化・習慣・母語の場合は尚更困難になったりします。父親脳を育成するためには男性が実際に赤ちゃんのお世話をする時間をどんどん増やして行くのが大事です。どんなにぎこちなくても下手でもオムツ変え、離乳食の準備、着替え、お風呂、トイレのサポート、その時々の成長段階に合わせたケアを父親が主体となってやる時間を増やして行くのが必要。できればそのときに母親がいない方が父親と子供の信頼関係が増し、父親が自分が責任者なんだと言う感覚も強まります。でもそのプロセスは徐々にです。ベビーステップです。男性が失敗を恐れた恐怖心とか面倒くささとかを強く感じないために女性がうまく扱う必要があります。

子供の母語をどうするのか、食習慣、躾の方法などに関する話し合いは子供が欲しいと思った時点で授かる前によーく話し合ったほうが良いです。日本の妊娠中の管理や子育ての常識はチリの常識と大きく異なります。例えば、添い寝をするのか、授乳に関して、新生児の服装について(帽子、ミトン、靴下の使用などをチリでは厚着をさせる傾向がある)、離乳食の進め方についても違いがあるので先に知っておいて二人で納得行くまで話し合っておいたほうが赤ちゃんの誕生時の家族攻めの対応がしやすいです。

最後に

これらのことをみなさんにお話しするのは決してチリ人男性との結婚が不幸の道を辿ると言うメッセージを投げかけるためではありません。反対に国際結婚となると個々の違いの他に文化による壁や落とし穴がプラスされるので、様々な面から冷静に検討して2人でよく話し合って、どちらかが我慢をするのではなく納得してちょうど良い按配の妥協点を見つけて行って欲しいと願うからです。

国際結婚は難しいと言われていますが、面白い部分リッチな味わいとなる要素をたくさん含んでいます。そのためにも感情に流され過ぎずに現実的に考えてみて欲しいなと思います。

餌に食いついた状態で逃げない魚になるよりは相手がいなくても自立して前進できる女性であることを内なる面から発揮して堂々と付き合っていってください。 この記事は夫とゆっくりコーヒーを飲みながら15年間のパートナー生活を振り返りながら一緒に書きました。