ラテンアメリカへの日本人移民で最も多いのがオキナワ出身者(ウチナーンチュ)で、5年に一度沖縄で開催される「世界のウチナーンチュ大会」の2016年10月の第6回大会へは、28か国からの末裔7,300人が参加し、“沖縄魂(マブイ)”を共感した。朝日新聞記者を経て2000~07年にはペルーを拠点に南米各地の日系社会も取材した著者が、この大会に遭遇したことを契機に沖縄移民史を調べ、月刊『世界』に連載したルポに加筆修正を加えたもの。
1899年に国内最後発でハワイ移民が始まり、メキシコ、キューバ、ペルーとアンデスを越えてボリビアへ転出した者、敗戦後の情報不足から勝ち組・負け組の抗争に巻き込まれたブラジル移住者等の家族史、そして戦後米国へ国際結婚で渡った花嫁達や戦前のフィリピン移民、沖縄の基地拡大に土地を追われた海外移住の背景などにも目を配り、複層的な沖縄移住史の一端を紹介している。
〔桜井 敏浩〕
(三山 喬 岩波書店 2019年4月 240頁 2,200円+税 ISBN978-4-00-024535-7)
〔『ラテンアメリカ時報』 2019年夏号(No.1427)より〕