国際協力機構(JICA)が開発途上国で協力したプロジェクトの歴史を紹介する「プロジェクト・ヒストリー」シリーズの新刊。ラテンアメリカについては、ブラジルでのセラード農業開発、チリでの鮭養殖、中米での算数・数学教科書作り、中米の風土病シャーガス病の克服についての既刊書がある(いずれも本誌・協会Webサイトで紹介)。
本書は1936年に始まった日本人移民に因るパラグアイの社会・経済への功績として、いまや世界的にも大きな生産量を誇るまでに至った大豆栽培の推進、大豆から派生した裏作の小麦や鶏卵、食肉加工等の農畜産物加工クラスター形成への貢献、新たな輸出産品となっている胡麻、社会に根を下ろした日本車販売のサプライチェーン、ワイヤハーネス組み立て等の自動車部品製造など、産業集積での役割を紹介している。そして日系社会が支える日本・パラグアイ間の技術協力、民間連携、農業開発など様々な分野での新たなパートナーシップ関係の広がりを概観し、パラグアイの政官民挙げての祝福を受けた2016年の日本人移住80周年の諸行事の模様を伝えて締めくくっている。
パラグアイ日系移住者の長年の活躍をオムニバス・ヒストリーで取りまとめた、パラグアイへの理解を助ける参考文献である。
〔桜井 敏浩〕
(北中 真人、藤城 一雄、細野 昭雄、伊藤 圭介 佐伯印刷出版事業部 2019年3月 198頁
1,500円+税 ISBN978-4-905428-95-4 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2019年夏号(No.1427)より〕