メキシコ・日本アミ-ゴ会は日墨の友好親善の促進とメキシコの理解を深める目的で「メキシコ歴史文化講演会」を毎年開催しています。
2019年度は「征服後、先住民が西欧文化と出会い、伝統文化の存続と融合をどの様に進めてきたか?」を主テ-マに、全4回の連続講演会を下記の通り開催します。
お誘いあわせの上、お出かけください。
日 時:2019年9月27日(金)、10月18日(金)、11月14日(木)、12月6日(金)
18:00~20:00 (開場17:30) (講演90分+質疑応答30分)
会 場:駐日メキシコ大使館 別館5階「エスパシオ・メヒカ-ノ」
定 員:先着順100名
参加費:無料
主 催:メキシコ・日本アミーゴ会
協 力:駐日メキシコ大使館 (一社)ラテンアメリカ協会(予定)
申込方法:メキシコ・日本アミーゴ会 (info@mex-jpn-amigo.org) へ「講座名・参加者
氏名(フリガナ)・メールアドレス・所属(アミーゴ会員)or案内の入手源」を明記してメールで直接お申し込み下さい。
☆アミーゴ会HP:http://www.mex-jpn-amigo.org/
9月27日(金) 第1回 「メソアメリカ先住民の絵文書と植民地時代の変容」
☆Homenaje Nacional al Dr. Miguel León-Portilla
本講演は、メキシコ政府が実施しているミゲル・レオン=ポルティ-ジャ博士へのオマ-ジュの一環として行われます。
講 師: 井上 幸孝 先生 (専修大学文学部 教授)
略 歴: 専修大学文学部教授、専門はメキシコ植民地時代史。
大阪外国語大学大学院修士(言語・文化学)、神戸市外国語大学大学院博士(文学)。メキシコ外務省奨学生(1995~97年、メキシコ国立自治大学)。現在、専修大学でラテンアメリカの文化と歴史の講義を主に担当し、メキシコ国立自治大学で大学院担当や人類学研究所年報の編集委員を歴任。
編著書に『人間と自然環境の世界誌――知の融合への試み』(専修大学出版会、2017年)、『メソアメリカを知るための58章』(明石書店、2014年)、共著書に『古代アメリカの比較文明論――メソアメリカとアンデスの過去から現代まで』(京都大学学術出版会、2019年)など多数。
講演概要:
メキシコでは、アステカやマヤに代表されるメソアメリカ文明が数千年にわたって栄えました。そうした古代メキシコの文明を築いた人々の間には絵文書(códices)が存在しました。絵文書には、天文や暦の情報のみならず彼らの歴史についても記録されていました。メキシコ征服(1519~21年)から500年の節目を迎えるにあたり、本講演では、先住民の歴史記録について征服前から征服後にかけての経緯を追うことにします。
まず、征服以前の先住民がどのように絵文書に物事を書き残していたのかを通観し、その後、スペインによる征服を経て、彼らがその伝統をどのように変容・継続させていったのかを見ていきます。具体的には、アステカの絵文書を例として、記録されていた具体的内容を明らかにするとともに、征服後1世紀ほどの間に起きた絵文書の変容について考察します。その上で、16世紀末~17世紀初めに多く書かれたアルファベット表記の歴史文書(先住民クロニカ)の内容とそれが現代に与え続けている影響についても検討します。
10月18日(金) 第2回 「「メキシコの食文化と造形表現の変化」
講 師: 鈴木 紀(もとい) 先生(国立民族学博物館 教授)
略 歴:国立民族学博物館・人類文明誌研究部・教授。専門はラテンアメリカ文化論、開発人類学、博物館展示学。第12回および15回の日墨交換留学制度により、ユカタン大学およびメキシコ国立人類学歴史学学校に学ぶ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程文化人類学専攻・単位取得満期退学。千葉大学文学部助教授を経て、2007年より国立民族学博物館に勤務。同館で今秋開催される展覧会「アルテ・ポプラル-メキシコの造形表現のいま」(2019年10月10日〜12月24日)の展示ディレクターを務める。近著に『古代アメリカの比較文明論』(共編著、京都大学学術出版会、2019年)など。
講演概要:
メキシコの食文化と造形表現を通じて、先スペイン期起源の文化伝統が現在までどのように継続しているか考えます。メキシコの食文化の特徴は、トウモロコシを主食とすることです。トウモロコシは、メキシコ原産の植物で、先スペイン期に栽培が始まりました。現在もメキシコ人の食卓にトルティーヤが欠かせませんが、これは先スペイン期以来の食文化の伝統継続の明白な証拠です。しかし他の料理や飲み物の場合は、もっと事情が複雑です。サルサ/副食としてのワカモレと、飲み物としてのチョコラテをとりあげ、食文化の変化について考えます。同様に、陶器や仮面などの造形表現でも、基本的な制作技術という点では、先スペイン期の文化の継続を認めることができます。しかし多くの場合、植民地時代以降に導入された技術や、カトリックの布教、市場経済の普及などの要因により、造形表現はさまざまな影響を受けました。トナラやメテペックの陶器、先住民族コラの仮面を手がかりに、造形表現の歴史的変化に着目します。
11月14日(木) 第3回 「われらは大地を食べ、大地はわれらを食べる~メソアメリカ先住民の暮らしと儀礼世界~」
講 師:小林 貴徳 先生(関西外国語大学短期大学 助教)
略 歴:関西外国語大学短期大学部助教。ラテンアメリカの文化と社会に関する講義担当。
神戸市外国語大学大学院(博士課程単位取得退学)。メキシコ外務省奨学生(2003~2004年、CIESAS社会人類学高等調査研究所)。専門はラテンアメリカ地域研究で、文化遺産国際協力コンソーシアム中南米分科会委員も務める。共著書に『アメリカスのまなざし-再魔術化される観光-』(天理時報社、2014年)、『メソアメリカを知るための58章』(明石書店、2014年)、現代の先住民族の儀礼世界、都市部の祭礼コミュニティ、観光開発と地域社会、文化遺産を学ぶ学習マンガなどについての論文多数。
講演概要:
現代のメキシコに居住する先住民の暮らしに継承されるメソアメリカの文的伝統、とりわけ儀礼的実践に焦点を合わせ、その背景に広がる世界観の核心に迫ります。
いまから500年前、メキシコを舞台にした異文化接触は、暴力をともなう征服事業を引き起こし、やがて精神と肉体を支配する植民地体制が確立されました。征服以後の世界に生じたのは、スペイン人を支配者層としつつ、多様な先住民が被支配者層を構成する植民地社会でした。約300年におよぶ植民地時代のあいだ、先住民の生活や言語はしだいに変容し、いわゆるメスティソ化が進行していきました。また、近代以降、メキシコ政府は先住民の国家統合・文化的同化を推進する政策を試みました。
それでも現在、メキシコには700万人以上の先住民言語話者が暮らしています。人やモノ、金や情報の移動が増し続けるいま、かつて閉鎖的と考えられていた先住民の村落共同体を取り巻く環境はおおきく変わってきています。現代の先住民の生活様式はどのように変容し、あるいはどのように受け継がれているのでしょうか。ここでは、先住民の暮らしの根幹にある世界観、すなわち、自然と人間の関わりの説明原理を明らかにするため、カトリック祭礼の枠組みで実施される農耕儀礼を考証します。
12月6日(金) 第4回 「メキシコにもたらされたキリスト教-カトリックの聖母像・聖人像にみる文化の混淆」
講 師: 渡辺 裕木 先生(国立民族学博物館外来研究員)
略 歴:国立民族学博物館外来研究員・慶応義塾大学(他2大学)非常勤講師。
メキシコ国立保存修復学博物館学大学学士(文化遺産(動産)保存修復学)、同大学大学院修士(博物館学)。筑波大学大学院世界文化遺産学専攻(博士後期課程単位取得退学)。大学卒業後はメキシコにおいて保存修復士として働く。テオティワカン遺跡出土遺物保存および展示、フランツ・マイヤー博物館蔵ドン・キホーテ稀覯本コレクション修復、タマヨ作「歌と音楽」修復等、公共機関の修復プロジェクト多数に参加。2015年日本に居を移し研究活動を開始。専門はラテンアメリカ地域の文化遺産保存・活用・展示など。
講演概要:
メキシコでは16世紀初頭のスペインによる征服以降、先住民のキリスト教化が進められました。スペインにとって「神(キリスト)を知らない人々にその教えを伝える」ことは、他の西欧列強に対して征服の正当性を示す重要な行為であり、コロニアル期に建設された教会や修道院、制作された絵画や彫刻の量と質からは、当時の教会勢力拡大の様子が伺えます。一方でメソアメリカ文化の思想や信仰は先住民社会に根強く浸透しており、それを否定し排除する意味を持つ布教活動に対する先住民の困惑あるいは反発は小さくありませんでした。その結果、先スペイン期の世界観、宗教観の要素が習合したメキシコ特有のカトリック信仰と文化が発展しました。
本講演では、16世紀初頭から19世紀初頭まで約300年続いたコロニアル期にメキシコ国内で描かれたキリスト教の聖母像および聖人像の内容を解説しながら、西洋思想やカトリックの信仰が征服後のメキシコにおいてどのように浸透して行ったのか、その一端を紐解いてみたいと思います。