執筆者:硯田一弘(アデイルザス代表取締役、パラグアイ在住)
「アスンシオンからビージャ・モンテスまでの2000キロの車旅」9月29日発
その風来坊経験を引きずったまま会社員時代に50カ国以上を回り、今年早期退職して、最後の駐在地パラグアイのアスンシオンに居残っている訳ですが、今週はそんな学生時代に戻ったかのような旅をしてきました。行き先は隣国ボリビアの田舎町Villa Montes。アスンシオンから陸路で往復約2000㎞のドライブでした。
先週はチリとボリビア・ペルーの間の領土戦争=太平洋戦争について書きましたが、今回訪れたVilla Montesはパラグアイとボリビアとの間で戦われたチャコ戦争(1932-38年)の激戦地。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%B3%E6%88%A6%E4%BA%89
現在のビジャ・モンテスは人口約5万人の山間の小都市ですが、チャコ戦争前にドイツ人によって整備された町並みは美しく、パラグアイ北の真珠Concepcionとは別の味わいの古都を感じさせるところです。
Villa Montesはパラグアイ側の上流支流のピルコマヨ川畔に位置し、川魚料理や安くて美味しいボリビアワインが楽しめるだけでなく、硫黄泉の温泉宿もあって、行政が観光客誘致にも積極的に働いています。
その観光のポイントの一つがパラグアイとの戦争の跡地をめぐる史跡ツアー。Gran Chacoというボリビア・アルゼンチン・パラグアイの三国国境に広がる地域を包括的に開発しようという参加国の地域行政府の方向性は、戦争を二度と繰り返さないためにも過去を振り返って学ぼうという前向きな姿勢で、隣国との軋轢が経済問題にも発展している日本も学ぶべきものと思われます。
小ぶりな天然ガスの冷却装置も発見しました。
今回の訪問は、パラグアイのMariscal Estigarribia市とボリビアのVilla Montes市に共通の課題である先住民族の生活向上に両行政府が如何に支援すべきか?というテーマを外国人の視点からも考えてほしい、との要請を受けて行ったものですが、自然溢れる素晴らしい環境のチャコ地方を日本の皆さんにももっと知っていただくためのプラットフォーム作りに貢献できるように工夫を凝らしてまいります。
「パラグアイと台湾の外交問題」 2019年10月7日発
先週NYで開催された国連総会に関しては、日本では16歳のグレタ・トゥンベリさんの環境スピーチや小泉環境相のセクシー発言しか取り上げられず、それ以外には日米貿易協定の合意等に注目が集まったのみでしたが、隣国台湾にとっては非常に大きな懸念を遺す会合でした。
https://jp.taiwantoday.tw/news.php?unit=148,149,150,151,152&post=162924
この総会の直前にソロモン諸島・キリバスとの断交(中国による囲い込み)が報じられ、外交関係を保つ国の数が僅か15カ国になったばかり。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/09/15-27.php
我がパラグアイは総会での言及は無かったものの、個別に関係維持を示す書簡を事務総長に送ったとのこと。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190929-00000002-ftaiwan-cn
今週は、台湾とパラグアイの友好関係について不安を掻き立てるニュースが流れました。パラグアイの主要輸出品目である牛肉の輸出が金額・量ともに昨年比1割以上落ち込み、過去三年間で最低レベルにとどまっており、畜産業界から大輸入国である中国向けに輸出が出来るよう、台湾と断交すべきとの提言がなされたのです。
https://www.ultimahora.com/la-carne-experimenta-la-peor-cifra-exportacion-los-ultimos-3-anos-n2847393.html
https://www.lanacion.com.py/negocios_edicion_impresa/2019/10/03/hablan-del-impacto-que-tendra-la-apertura-de-china-a-la-carne/
こうした世論の醸成に対して台湾との長年の絆を重視する有識者から懸念の声が上がりました。
https://www.lanacion.com.py/politica/2019/10/04/preocupa-que-pongan-en-jaque-el-desarrollo-que-provee-taiwan/
アスンシオンには台湾の立派な寺院や学校もあり、国会議事堂も台湾政府の寄贈による建物で、これまで台湾が南米の小国パラグアイにもたらしてきた多大な貢献は、一部の生産者の一時の利益の為に損なわれるべきものではありません。南米の各国で中国政府がとってきた政府懐柔のバラマキ施策を見ていると、パラグアイだけはこうした金権懐柔政策に巻き込まれずに、今こそ永年の絆を確認するようキッパリとした正義の意思表示を行ってほしいと思います。
「パラグアイにおける先住民の運動」 2019年10月12日発
昨日金曜日はチャコ地方への交通の要衝であるレマンソ大橋が原住民によて封鎖され、ほぼ一日中交通がマヒする事態が発生しました。
https://www.lanacion.com.py/pais/2019/10/11/fiscalia-solicito-que-policia-despeje-el-puente-remanso/
この道路封鎖はINDI(先住民族庁 Instituto Paraguayo del Indígena)総裁の辞任を求めて展開されたもので、参加した原住民代表は政府の原住民対策が不十分であるとの理由で行動を起こしたと報じられています。
レマンソ大橋はチャコ地方とアスンシオンを結ぶ国道9号線唯一の架橋であり、これが使えなくなるとチャコ経済がマヒすることになる、正にボトルネックと言えます。ここを押さえることが如何に戦略的に有効であるか、また先住民の多くが住むチャコの入り口での行動が如何に注目をあつめるか、熟知したうえでの抗議行動と言えます。
しかし、各新聞を読み込んでみると、橋を封鎖したのは橋周辺に住む新住民で、元々飛行場等として整備される筈だった場所を占拠して棲みついた人たちで、現政府に対抗する勢力が住民を買収して行動を起こさせた可能性もあるように感じられます。
結果的には昨日のうちに総裁は辞任を表明し、橋の封鎖は解かれましたが、こうした行動が常態化すると、アルゼンチンやベネズエラのような低所得者優先の施策がとられ、最終的に国全体を貧しく貶めることになりかねないので、こうした動きへの対応には注視が必要です。
社会的弱者の救済は重要な政策であることは当然ですが、彼らを利用して政治的勢力拡大を図るグループの存在は、南米だけでなく民主主義国家の大きな課題と言えます。
「パラグアイでのキャッシュレス社会」 2019年10月20日発
日本では10月1日の消費税率引き上げに伴って急速にキャッシュレス化が進んでいると報道されていますが、パラグアイでも永年の懸案と言われたバスの乗車券の電子化が先ずアスンシオン周辺で実現します。
https://www.lanacion.com.py/pais_edicion_impresa/2019/10/17/venta-de-tarjetas-de-billetaje-electronico-ya-esta-habilitada/
早速このカードをゲットしようと新聞に紹介されたAqui Pago販売暑に出向きましたが、未だカード現物は届いていない模様です。
アスンシオンでは渋滞の緩和策としてコロンビアやペルーで導入されているメトロバスというバス専用レーンの導入を目指して工事が行われていましたが、請け負ったポルトガルの会社が工期途中で予算切れを理由に工事を中断、結局専用レーンは実現しないまま、バス料金の徴収システムだけ電子化される流れになったようですが、まあ一歩でも前進しているのであればヨシとすべきでしょうか。
南米で生活して感じるのは、キャッシュレス化は日本より進んでいるということ。治安の良い日本では、現金を持ち歩いても盗られる心配はありませんが、南米では現金を狙った泥棒やひったくりが多いので、カードが使える場面がより多くあるように思われます。携帯電話の普及でも、有線電話網の出来上がった日本と違って、電話が無かった地域でも無線で通話できるという理由から、遥かに早く携帯電話が普及していました。
南米では珍しく24時間営業のコンビニが普及しているアスンシオンですが、今月二度目の強盗事件があったとのニュースも流れました。
https://www.ultimahora.com/roban-segunda-vez-este-mes-un-minimercado-as