2019-11-07 15:53:22
【演題】 「日本とラテンアメリカを結ぶ海運・空運の現状と未来」
【日時】 2019年10月29日(火)15:00~16:30
【場所】 田中田村町ビル5F、5C会議室
【参加者】 約35名
2017年に川崎汽船、商船三井、日本郵船の定期コンテナ船事業を統合する形で発足したOcean Network Express Pte.,Ltd(シンガポール)の日本法人、ONEジャパンの木戸貴文代表取締役社長、および世界中の航空会社やホテルなどの旅行産業をオンラインで結ぶGDSシステム(Global Distribution System)を運営する全日空系列のインフィニトラベルインフォメーションの川原一志常務取締役をお迎えし、日本とラテンアメリカを結ぶ海運・空運インフラの最新事情と今後の展望についてお話しを伺いました。講演の内容は以下の通りです。
ONEジャパン(オーシャン ネットワーク エクスプレス ジャパン(株))
木戸貴文 代表取締役社長 「コンテナ船の大型化と共同配船の深化」
- 2019年の世界全体のコンテナ荷動きは対前年比で2.4%増。中南米主要国からの日本の輸入額は2011年頃から増加し、国別では自動車部品関連が多いメキシコが圧倒的。ブラジルからは鶏肉、チリからはワインも増えている。
- コンテナ船社は合従連衡の時代に入り、2019年には対2011年比でアジア―南米東岸航路は17社から9社、アジア―南米西岸航路は17社から11社に統合された。
- コンテナ船運航の主流は、2001年の中国のWTO(世界貿易機関)加盟により、生産拠点のアジアへのシフトが起こった。その後BRICSや新興市場の拡大、港湾の混雑、資源価格の高騰で需要に供給が追い付かない状況となる。2008年のリーマン・ショック後は燃料油が高騰し省エネのための低速運航化が進む。2010年には超大型船、省エネ船が出現し、輸送コストが下がったことで海運企業間のコスト競争が激化。合従連衡、アライアンスの組み換えも進んだ。
- コンテナ船の超大型化の理由の一つには環境規制がある。2020年1月以降は、全海域で燃料油中の硫黄分濃度を現行の3.5%以下から0.5%以下にする船舶SOx規制が施行される。さらに2050年には対2008年比で温暖化ガス排出量を5割削減という規制も課せられる。これらの環境規制を見据えたコンテナ船の新旧更新を図ることが各船社の重要な課題となっている。
(株)インフィニトラベルインフォメーション
川原一志 常務取締役 「ラテンアメリカが近くなる航空路線とは?」
- 中南米への日本人の訪問者数は、2014年ごろからメキシコが急増し2018年には約16万人弱まで増加した。一方、同時期のブラジルへの渡航者数は減少し約6万人、ペルーは約5万人弱となっている。2018年の日本―中南米間の旅客の経由地は1位が北米・メキシコ、2位が欧州、3位が中近東・アフリカ。空港別では1位がフランクフルト、2位がドバイ、3位がメキシコシティ。フランクフルトが増えたのはブラジル―羽田路線就航の影響があるとみている。
- 米国や欧州での乗り継ぎは、利便性は高く旅行時間も短いが、乗り継ぎ便の予約が取りにくく常に混雑している。中近東乗り継ぎはビジネス渡航での評判はいいが、旅行時間が最長のうえ、路線も限定的だ。
- 2017年に成田―メキシコシティ間でANAのノンストップ便が就航した。期待されるブラジルまでのノンストップ便だが、サンパウロまで飛行距離が1万8489キロもあり機体能力からハードルは高い。日本―中南米のノンストップ便+接続便の長所は、パートナー航空会社のハブ空港に乗り入れることで中南米を一網打尽に出来ること等がある。直行便(途中寄港)は同一ブランドで一貫したサービスが提供でき、乗り継ぎの利便性を考慮する必要がないのが長所だが、燃料費やクルーなどの人件費が膨大になるという短所がある。パートナー航空会社のハブ空港へのノンストップ便の就航が最も実現性が高いと考える。
- 新規路線の実現には顧客の航空会社への働きかけが効果的で、誘致に熱心な路線の実現可能性は高くなっている。
講演後の質疑応答では、コンテナ船の中国の存在感、コンテナ船の経由地、コスト節減や燃料の再エネ利用について、米中貿易摩擦の影響、北極海航路の可能性など活発なやりとりが展開した。
会場の様子
左: 木戸貴文ONEジャパン社長
右: 川原一志インフィニトラベルインフォメーション常務
配布資料
「日本とラテンアメリカを結ぶ 海運・空運の現状と未来」 コンテナ船の大型化と共同配船の深化
「日本とラテンアメリカを結ぶ 海運・空運の現状と未来」 ラテンアメリカが近くなる 航空路線とは?