講演会報告「メキシコなど主要ラテンアメリカ進出先の経営管理セミナー(現地法人の会計・税務・人事労務の要点)」(2019.11.12開催) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会報告「メキシコなど主要ラテンアメリカ進出先の経営管理セミナー(現地法人の会計・税務・人事労務の要点)」(2019.11.12開催)


【演題】メキシコなど主要ラテンアメリカ進出先の経営管理セミナー(現地法人の会計・税務・人事労務の要点)
【講演者】東京コンサルティングファーム ブラジル法人代表 田村 彩紀氏
【日時】2019年11月12日(火)15:00~16:30
【場所】新橋ビジネスフォーラム
【参加者】約20名

田村氏からは、日本企業の主な進出先でご自身駐在経験を持つメキシコとブラジルでの「経営管理」の要点についてお話いただいた。講演後、参加者からブラジルから日本・米国島への利益送金、会社規模に応じた日本人役員数の法的制約、メキシコの雇用契約(定年制無し)において退職をどうするか、ブラジルの税制改革の行方、ブラジル人労働者とメキシコ人労働者の質的対比、アジアと比べてラテンアメリカ進出のメリット等について質問が出され、全てに丁寧に回答・コメントされた。

経営全般(リスク管理の重要性)

  • 現地法人が直面する為替変動、人材確保、賃金上昇等の様々なリスクに対しては、結局、リスクの特定化、定量化、評価、対応というリスク管理の基本に立ち返るのが最も有効且つ確実な解決策。
  • ラテンアメリカの会計・行政手続き(年次コンプライアンス)はアジアに比べて多く、複雑であり、定期的にルール情報をアップデートしておくことがトラブル回避の要諦。

会計・税務管理

●メキシコ

  • 個人・法人にRFC(納税者登録番号)があり、法人は月次申告を行う。領収書だけでは有効な証書と認められず、常にFACTURA(インボイス)が必要。
  • 個人所得税の居住性の判定基準は、滞在日数が183日以上。
  • 2019年1月1日から、受取IVA(付加価値税)と支払IVAの差額で、支払超過IVAがある場合、法人所得税との相殺が認められなくなった。
  • 同じく2019年1月より、北部国境沿いの税率に優遇措置が導入された(法人所得税30%→20%、IVA16%→8%)。

●ブラジル:ブラジルの税制はメキシコに比べると複雑

  • 連邦税、州税、市税等があり、納入時期が異なる。
  • 個人所得税の最大税率は27.5%にすぎない。
  • 法人所得税の課税方法には、実質利益法と推定利益法の二種類ある。
  • 2019年9月現在の税制改革の方向としては、従来の金融取引暫定負担金(CPMF)に対して、より広範な金融取引税金が導入されるほか、個人所得税率や連邦税の見直しが行われる予定。

人事・労務管理

人事評価は、成果目標と行動目標(コンピデンシ―)の設定→中間面談→評価という適切な評価軸(PDCAサイクル)を設けることが重要。日系企業で働くナショナルスタッフの不満の多くは上司からのフィードバックの不足。フィードバックの実施がナショナルスタッフの意欲向上につながるケースが多いが、その場合、事実・判断(評価)・対処の3セットで提示するのがポイント。

●メキシコ

  • 雇用契約書の締結は義務だが、就業規則の作成は義務ではない。試用期間は30日。試用期間後の雇用継続は無期限。
  • 各種手当
    1. PTU(年末手当)、以前はPTU回避のため派遣会社を使うという手があったが、最近は派遣社員にも支払い義務が生じている。
    2. 年末に支払うアギナルド(クリスマス・ボーナス)
    3. 休日出勤手当;通常の1.25倍~2倍
  • 自主退職と懲戒解雇では一時金などの退縮手続は大きく異なるが、この二つの線引きが困難。事前に雇用契約である程度の想定しておくのも一法。

●ブラジル

  • ブラジル労働法は2017年11月に74年ぶりに改正され、労働者に手厚かった旧法の下ではブラジルの労務コストを1.7~2倍としていたが、改正法により削減されると共に、新規雇用がやり易くなった。

会場の様子


講演会配布資料(会員限定)

講演会配布資料「メキシコなど主要ラテンアメリカ進出先の経営管理セミナー(現地法人の会計・税務・人事労務の要点)」(2019.11.12開催)