執筆者:硯田一弘(アデイルザス代表取締役、パラグアイ在住)
各地で相次ぐデモや暴動
優等国チリでの暴動が長期化したことで、APECやCOP25の国際会議が取り止めになったこと、選挙結果で揉めるボリビアや、先の選挙で決着が付かなかったウルグアイ、左派政権への逆戻りが確定したアルゼンチンなど、南米を廻るこの一週間の報道は必ずしもポジティブなものではありませんでした。
雨不足による野火の発生と収穫への影響
こうした政情に関する報道で野火のニュースは鳴りを潜めていますが、先週チャコ地方を走った際にはまだあちこちで煙が上がっていましたので、パラグアイ以外の国々でも同様の現象が継続して発生していると思われます。
雨の不足は野火だけでなく、河川の水位の低下を招き、河川交通に大きく依存するパラグアイ経済にも影響が出ています。更に今日のLa Nacion電子版では、この時期に大量に稲作用の水が引き上げられることで、河川の川底が露呈する現象も報じられています。
22億ドル相当を輸出する大豆や2.6億ドルを輸出するトウモロコシに加え、2億ドルを輸出するコメはパラグアイにとって重要な輸出産品。
https://oec.world/ja/visualize/tree_map/hs92/export/pry/show/1006/2017/
しかし、播種から出穂までの3ヶ月以上に亘って大量の水を必要とするコメ作りでは、当然降水だけに頼ることは出来ないので、河川から灌漑路を通じて水を確保しています。稲作カレンダー、南半球のパラグアイでは9月から10月の間に空中から種を蒔き、2月から3月に収穫されますが、それ以外は日本のカレンダーのイメージと似通っています。
しかし、パラグアイの米作りの規模感は日本とは全く違います。これは写真では伝えきれませんので、コメ作り最大手の会社の紹介ビデオをご覧ください。
ところで昨日と今日の二日間にわたって多くののテレビ局やラジオ局等のメディアが協力して社会弱者救済のための募金活動を行うTeleton2019が開催されました。
日本でも相次ぐ自然災害の被害者の皆さんへの募金活動が行われていますが、かつて季節の風物詩とも言えた緑の羽根や赤い羽根の募金活動は最近あまり大きく取り上げられなくなったように思います。特定の民放が24時間テレビで銘打って同様の番組を作っていますが、Teletonは民放各社が横断的に行う活動なので、この二日間はどのチャンネルを回しても同じ映像が流れます。こうした番組を視聴することで、社会的弱者を思いやる気持ちが広く国民に浸透しているパラグアイ、住み易さのもう一つの土壌とも言えます。
昨日土曜日はアスンシオンのCerro Porteño球場で初のサッカー南米カップ決勝戦が開催され、土砂降りの豪雨の中、エクアドルのIndependiente del Valleが3-1でアルゼンチンのColón de San Feを下して南米王者となりました。
アスンシオンのCerro Porteño球場
Colón de San Feというチームはアルゼンチンの中でも比較的アスンシオンに近いSanta Fe州に在ることから、この週末は3万人を超えるアルゼンチンのサッカーファンが主に陸路でパラグアイに入国、市内のホテルは早い時期からほぼ満室となり、サッカーが観光の大きな収入源になっていることを証明しました。
Hinchas acaparan Asunción con algarabía y color(コロンファンがアスンシオンを占拠)
https://www.facebook.com/SenaturPy/videos/vb.215513440788/845375902532075/?type=2&theater
一方、昨日は市内のコンベンション会場でパラグアイと日本の修好百周年を祝う日本祭りが開催され、これまた超大勢の来場者で盛り上がりました。毎年恒例となっている日本祭りですが、初めて屋内で開催されたことで夕方からの豪雨の影響も受けず、安心して色々な行事を楽しめました。祭りの運営に携わった多くの方々に感謝申し上げると共に、こうした活動を通じてパラグアイでの日本ファンがもっと増えることに期待したいと思います。
日本祭り会場風景
南米南部では現在も深刻な雨不足が続いており、パラグアイ川も大幅に推移が低下して1860年に三国戦争に投入されるべく英国から持ち込まれ、ブラジルの攻撃を受けて沈没していた蒸気船Paraguarí号が川底から姿を現し、「歴史的遺産の復活」と話題になっています。
https://www.lanacion.com.py/gran-diario-domingo/2019/11/17/el-resurgimiento-del-paraguari/
日本の幕末に当たるこの時期、鉄道が敷設されており、大英帝国とのつながりが強かったパラグアイは既に国内に自前の製鉄所も持つ当時南米最強の国家であったと言われています。
この水位の低下は一方で物流を水運に大きく依存するパラグアイ経済に大きな打撃を与えており、クリスマスを控えたこの時期に商品が届かないとの悲鳴も報道されています。
蒸気船が発見された対岸は現在大規模な開発が進んでいて、将来の工業団地や住宅地として有望視されています。この週末はパラグアイ初のボートショーも開催され、現場は華やかなムードに包まれていました。
ところで、選挙結果の不正に関する指摘を受けて先週末辞任を表明したボリビアのモラレス前大統領が今週火曜日未明メキシコ政府が派遣した軍用機に乗って亡命を果たしましたが、途中給油の為にアスンシオン空港に立ち寄りました。
この際、燃料だけでなく多額の金品をパラグアイから持ち出したとの報道がありましたが、真相については語られないまま今日に至っています。
モラレス氏は亡命先のメキシコで自信の復活を約束しましたが、こちらの復活はご遠慮申し上げたいところです。