メキシコ南部オアハカ州のリオ・パパロアパンに伝わる月と太陽の話。太陽の光の下で人々が昼間の祭を賑やかに楽しんでいるのを羨んだ月が、夜にも祭を催したいと村の夜の番人にもちかけ、祭を取り仕切るパドリーノたちの協力を得て、村人、動物から人魚に至るまでランタンと食べ物、飲み物などを持ち寄り、祭を催した。皆大いに飲み食いし踊り楽しみ、喜んだ月もごちそうを振る舞われて食べ過ぎ、おなかが重くなって空を進んで行くことが出来なくなったので、人々は時間が判らなくなっているうちに太陽が顔を出してきてしまった。夜通し起きて騒いでいた人々は、日が昇っても起きられず、誰も畑で働く者はいなくなってしまった。月は世界のバランスを崩してしまったことを悔いて、以後は再び夜の空に留まることにしたが、楽しい祭のことが忘れられず、今でも時々ちょっと羽目を外すのだが、オアハカの人々は朝起きて太陽と月の両方が空に浮かんでいるのを見ると「夕べはお月さまがお祭りをしていたんだね」と言うという。
マヤの時代からサポテカやミシュテカの人々は月の運行を観察してきたが故に、こういった現象をユーモラスに表現しているのだが、巻末にオアハカの祭、本書に出てくるスペイン語等の地元の用語や食べ物、女性の労働などの解説も付されているが、何よりもオアハカ州在住の壁画も手がけている画家によるユーモラスな絵が楽しい。
〔桜井 敏浩〕
(マシュー・ゴラブ文 レオビヒルド・マルティネス絵 さくまゆみこ訳 のら書房 36頁 2019年12月 1,600円+税 ISBN978-4-9050155-48-2 )