『図説 マヤ文明』 嘉幡 茂 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『図説 マヤ文明』 嘉幡 茂


 古代文明を理解するためには、社会背景を考慮すると文明が誕生する原理がより深く見えるという信念から、マヤ文明を知るために古代メソアメリカ地域全体の社会的背景の枠組みまで視野を広げ、マヤの国威の発揚は経済や軍事、外交を基盤とするのではなく、民衆に文化と芸術によって物質文化に反映したことを示唆し、マヤが誕生した地域のみで興亡したのではなく、メソアメリカ各地の社会と連続し、それらとの関係で盛衰を繰り返してきたことを探求している。
 先古典期の古代都市の誕生、古典期に入って王たちの台頭、メソアメリカ各地と世界がつながった後古典期と続き、この時代に王権の安定、領土の維持と拡大、交易ルートの確保がなされた。本来人口増加のために行われた戦争は、初めのうちは大きな経済的ネットワークの中でライバルの貴族を生け贄にし従属させるためだけだったのが、やがて他都市を破壊してしまう戦争に拡大して、相互依存関係の崩壊がマヤの衰退につながったという。
 多くの写真・図表で使い、パレンケ、ティカル等南部マヤやメキシコ各地の10か所の遺跡を紹介しており、マヤ文明を知る上で興味は尽きない。著者は長くメキシコ国立自治大学人類学調査研究所で考古学を研究してきた人類学者で、現在は京都外国語大学嘱託研究員。

〔桜井 敏浩〕

(河出書房新社 2020年2月 132頁 2,000円+税 ISBN978-4-309-76292-0 )

〔『ラテンアメリカ時報』 2020年春号(No.1430)より〕