連載レポート47:統計・ランキングに見るラテンアメリカその8 引退生活に適した国ランキング2020 The Annual Global Retirement Index 2020 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載レポート47:統計・ランキングに見るラテンアメリカその8 引退生活に適した国ランキング2020
The Annual Global Retirement Index 2020


連載レポート48

統計・ランキングに見るラテンアメリカその8
引退生活に適した国ランキング2020The Annual Global Retirement Index 2020

執筆者:桜井悌司(ラテンアメリカ協会常務理事)

米国の引退生活の専門誌である「International Living」誌は、毎年、米国人にとっての引退後の生活を過ごす上で、どの国が最も適しているかについてのランキングを発表している。この調査は、下記の10の項目を参考にしている。

Housing(住宅状況)
Benefit & Discount (国によっては、外国人引退者に対し、各種恩典や割引制度を提供している国がある)
Visas & Residence (ビザや永住権)
Cost of Living(生計費)
Fitting in and Entertainment(友達作りやエンターテインメント)
Healthcare(ヘルスケア状況)
Development(道路、水道、衛生状況、生活水準等の発展度合い)
Climate〈気候〉
Governance(安定した安全な環境、個人の自由、官僚制度の少なさ等)
Opportunity(ビジネスの機会、地方政府による支援等)

この調査では、1位から24位までのランキングを発表しているが、米国人の立場から見た生活適合国なので、必然的にラテンアメリカの国々が多数ランクインしている。下記に、表で紹介するが24カ国の内、11カ国がラテンアメリカの国である。とりわけベスト10の中に、パナマ(2位)、コスタリカ(3位)、メキシコ(4位)、コロンビア(5位)、エクアドル(6位)と上位に5カ国も入っていることは注目に値する。

表1 引退後の生活に適した国ランキング 2020

順位 国 名 ビザ・住居 気候 健康管理 生計費 総合点
1位 Portugal 75 88 98 85 86
2位 Panama 95 80 94 89 85.8
3位 Costa Rica 88 80 96 82 85.3
4位 Mexico 86 86 88 86 83.8
5位 Colombia 88 87 94 88 83.4
6位 Ecuador 88 87 84 90 82
7位 Malaysia 93 62 93 85 81.9
8位 Spain 70 72 97 81 76.8
9位 France 68 82 85 66 76.4
10位 Vietnam 68 60 84 92 76
11位 Malta 76 63 79 68 75.7
12位 Cambodia 80 57 80 93 75.6
13位 Peru 85 87 82 91 74
14位 Ireland 63 58 82 71 73.9
15位 Bali * 57 62 72 86 70.3
16位 Italy 57 58 84 86 67.9
17位 Thailand 57 58 80 87 67.8
18位 Belize 87 58 63 80 67.4
19位 Uruguay 58 58 66 76 65.7
20位 Roatan ** 75 58 65 78 66.7
21位 Dominican Rep 57 57 57 77 65.3
22位 Croatia 70 61 72 88 63.2
23位 Nicaragua 70 61 72 88 63.2
24位 Bolivia 57 67 57 92 62.8

出所: The annual Global Retirement Index 2020
*Indonesia
**Honduras

1位から10位までは、同誌の地域別特派員のコメントがついているので、簡単に紹介しよう。特派員はそれぞれの国の魅力や生計費について紹介しているが、米国人の観点からのものであり、日本人が、実際に引退後の年金生活を過ごす上では、確認が必要である。

第1位  ポルトガル

「魅力」1年中快適な気候、手頃な生活費、古代遺跡、素晴らしい博物館、全国どこへ行ってもフレンドリーで優雅な国民、質の高いヘルスケア―、美味しい食事とワィン、高い安全性、都市部では英語が通じる、ハイキング、ゴルフ、ウインドサーフィン等々アウトドア―を楽しめる、リスボン、オポルト、アルガルヴェがお勧め

「生計費」2,500ドルで贅沢ではないが快適な生活。簡単なランチなら10ドル。カシュカイスやアルガルベの外国人ビーチを選択すれば、3,000ドル、スープ、メイン、飲み物、デザート、コーヒーといったシンプルなランチは、10ドル程度

第2位  パナマ

「魅力」食べ物、ビール、ジャズ、映画、ゴルフ、テニス、ビーチ等を楽しめる生活、医療制度、英語が通じる、通貨はドル(バルボアと併存)、活気に満ちたコミュニティ、世界最高水準の退職者プログラム(Pensionado Program)

「生計費」パナマシテイのオーシャンビューのコンドミニアムが1,500ドルで借りられる。特派員は、シングルで家賃、食料品、エンターテインメントを含め月額2,600ドルで生活している。他国での収入は免税。退職者プログラムでは、航空賃25%、ホテル等宿泊費は最大50%割引

第3位  コスタリカ

「魅力」熱帯気候、低生活費、一流でリーゾナブルな医療、自然の美しさ、掘り出し物の不動産、中米のスイス、安定した民主主義と平和を愛する国民性、アウトドア・ラブ・カルチャー(ハイキング、ダイビング、ゴルフ、釣り、乗馬、ヨガ等)、地元産の果物、野菜、シーフード、フレンドリーな国民、外国人コミュニテイLGBTに寛大、サンホセやグアナカステがお勧め

「生計費」月額2,000ドルでは、必ずしも贅沢な生活はできない。毎月の報告された所得の7~11%を支払えば、社会的医療プログラムの利用が可能

第4位  メキシコ

「魅力」多様性のある自然(ビーチ、湖、農地、山々、砂漠等)、活気に満ちた生活と文化、充実した国民医療計画、生計費の安さ、フレンドリーな国民、外国人コミュニティ、人気のあるスポットは、カンクン、チャパラ湖、サンミゲール・アジェンデ、海岸沿いの隠家的な場所

「生計費」場所に応じて、家賃やヘルスケアを含め1,500ドルから3,000ドル。全国シニア割引制カードによって10%から20%の割引

第5位  コロンビア

「魅力」。Perfect springと呼ばれる気候の良さ、世界で2番目に生物多様性に恵まれた国なので、気候や環境に応じて住む場所(例えば、カルタヘナ、メデジン、ぺレイラ、マニサーレス等)を選べる、退職ビザの取得が容易、医療制度が良い(WHOで世界22位、米国やカナダより上位)、国民はフレンドリー、生計費が安い

「生計費」メデジン市の場合、場所、ライフスタイル、医療ニーズによって異なるが、カップルで1,030ドルから2,720ドル。4ドルで朝食や昼食が、8ドルで素敵な夕食が食べられる

第6位  エクアドル

「魅力」多様性のある気候〈1年中暖かい海岸気候、アンデスの温暖な気候等)、住む場所の多様性(小さな村での生活、大都会の利便性等)、自然の美しさ、生計費の安さ、フレンドリーな国民

「生計費」15万ドルで太平洋ビーチのコンドミニアムの購入が可能、クエンカ市のダウンタウンで500ドル出せば、2ベッドルーム、2バスルームのコンドミニアムを借りられる。場所やライフスタイルにもよるが、カップルで1,650ドルから1、825ドルで生活可能、高齢者は航空賃半額、自動車を持つ必要が無い(バス、タクシー等が安価)家政婦が1日あたり、、10ドルから20ドルで雇用できる

第7位  マレーシア

「魅力」ペナンの場合:牧歌的なビーチ、美しい島々、手つかずの熱帯雨林、法律が英国のシステムなのでなじみ易い、英語が問題なく通じる、アウトドア・ライフスタイル(スイミング、ハイキング、スキューバ・ダイビング等)が楽しめる、生計費が安い

「生計費」カップルで、家賃込み、1,800ドルで快適に過ごせる。中華料理(10品)の1人当たりの価格は、5.70ドル程度

第8位  スペイン

「魅力」多様性に富む気候と自然、食品安価(野菜・果物は多様性があり、豊富)、国民がフレンドリー、食事が美味しくてリーゾナブル、鉄道旅行・バス旅行が快適、ビーチが素晴らしい、医療・歯科医療も優れている。同性結婚やLGBTに対し寛大。

「生計費」カップルで月額2,500ドル程度。食事は、定食で11ドルから20ドル。フルコースで30ドル以下。医療の経費はリーゾナブル

第9位  フランス

「魅力」美味しい食べ物・ワイン、オートクチュール、良い気候、手つかずの田舎、きらびやかな文化、カラフルな伝統と歴史、優れた医療

「生計費」パリやリョンなど主要都市以外では、カリフォルニアの家賃の3分の1くらい。カップルで、住宅費とヘルスケアを含め、月額2、085ドルから2、483ドル。食事も38ドル程度でしっかり食べられる。医療も保険制度で70%がカバーされ、米国より安価。電気、ケーブルテレビ、水道料金は米国並み。

第10位 ベトナム

「魅力」近代的で進歩的な都市、古代の遺跡、混雑していないビーチ、険しい山々、友好的な国民性、フランスの影響、急速な発展により、質の高い医療、道路等インフラ、利便性が高まった。英語が相当通じる。

「生計費」ホーチミンやハノイでも、カップルで、月額1、500ドル以下で過ごせる。ある米国人夫婦は、月額2、700ドルで予算を組んでいるが、年数回の外国旅行も含まれる。電気水道ガス料金は月に120ドル、食料雑貨費は270ドル程度。

以   上