『100人の作家で知る ラテンアメリカ文学ガイドブック』 寺尾 隆吉 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『100人の作家で知る ラテンアメリカ文学ガイドブック』  寺尾 隆吉 


 この10年来、日本においてラテンアメリカ文学の翻訳出版数はそれまでの30年間に比べ飛躍的に増えている。出版社の努力、東京に2007年に開館したスペイン政府のセルバンテス文化センターの普及活動、スペインやラテンアメリカ各国政府の助成金制度の整備などに拠るところが大きいが、その結果どの作家の何の作品を読んだらいいかという選択肢が拡大した。そこで現在も読まれ続けているスペイン語圏の作家100名を選んで、単なる作者・作品の紹介には留めず、時には辛辣な論評を厭わず、作家の文学史的な位置づけとその代表作の概要、文学研究者の観点からの評価を集大成している。
 ラテンアメリカ文学の100人の作家一人ひとりの簡潔な伝記、文学史的評価、人物像や逸話、作品に関わる作者自身の発言や裏話まで取り上げ、ラテンアメリカ文学で常に重視される10人についてはページを倍増して紹介し、その他の作家についても著者が薦める代表作1~2作の見どころを、日本での出版情報も付記して簡潔に解説している。
 一部の名作以外はとかく取っ付きにくく、その出自や作風などが頭に入らないラテンアメリカ文学の作家について、翻訳でも多くの実績をあげている早稲田大学教授が簡潔に分かりやすく整理した、文学事典的な使いやすい手引き書。

〔桜井 敏浩〕

(勉誠出版 2020年3月 232頁 2,800円+税 ISBN978-4-585-29194-7 )
 〔『ラテンアメリカ時報』 2020年夏号(No.1431)より〕