16世紀から19世紀の間、1,250万人以上ものアフリカにルーツをもつ人々が奴隷として環大西洋貿易の一環で南北アメリカに送り込まれた。その子孫たちは彼らの先祖を敬い、文化、宗教、伝統を守り続けようと仮面や衣装、キャラクターを創り出してきた。シマロンとは黒人逃亡奴隷を指すが、キリスト教会は先住民の古代からの信仰やアフリカ由来の信仰を悪霊と貶め迫害し、彼らの偶像、仮面、悪霊・悪魔の扮装を根絶しようとしてきた。
フランス海外県のグアドループ島から始まり、カリブ海各地、ハイチ、ドミニカ共和国、キューバ、ブラジルのペルナンブーコ州、パライバ州、マラニョン州等北東部、コロンビア、ペルーの北部から南部まで、メキシコ、グアテマラ、ベリーズ、パナマの各地と米国のルイジアナ州に至る288の仮面、衣装を、ほとんどを各1頁大の美しいカラー写真で230余点収録してあり、その多彩な形態、色使いもさることながら特異な表現・発想に圧倒される。
巻末にコロンビアの博物館学研究者による仮装についての意味・背景とキャラクターとグループについての解説があり、ラテンアメリカにある奇想天外な世界を楽しめる写真集。
〔桜井 敏浩〕
(イシュマエル・リード序文、アナ・ルイス・バレンシア解説 靑幻舎インターナショナル発行 靑幻舎発売 2019年3月 320頁 3,800円+税 ISBN978-4-86152-703-6 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2020年夏号(No.1431)より〕