連載エッセイ８２：ラテンアメリカ域外の主要国の国民が住んでいるラテンアメリカの国々ベスト１０

連載エッセイ７９

ラテンアメリカ域外の主要国の国民が住んでいるラテンアメリカの国々ベスト１０
（Los 10 paises con mas poblaciónes　〇X en la America Latina）

執筆者:桜井　悌司（ラテンアメリカ協会常務理事）

この原稿は、前回の連載エッセイ７５の続編である。すべてYouTubeからの情報で、ラテンアメリカの域外の主要国の国民がラテンアメリカのどの国に居住しているかを見たものである。ここでも数字の出所、統計の基準、数字の厳密さ、時点等についての疑問はあるが、全体像をつかむために紹介する。紹介する国は、スペイン人、イタリア人、ドイツ人、アメリカ人、ロシア人、アラブ人、ユダヤ人、日本人、中国人、韓国人である。加えて、「全人口に占めるヨーロッパ系と先住民の人口数ランキング」、「最も混血が進んでいる国ベスト１０」及び「ヨーロッパ主要国に居住しているラテンアメリカ人の数」も紹介する。

１）スペイン人が多数住んでいるラテンアメリカの１０の国

スペインは、ラテンアメリカの大部分の旧宗主国であるため、多くのスペイン人がラテンアメリカにビジネスや移住等で居住していることは容易に理解できる。国別で見ると、アルゼンチンが最大で、約４７万人、１０万人以上は、ベネズエラ、キューバ、メキシコ、ブラジルと続く。言語が異なるブラジルにも１３万人が居住していることは注目に値する。

なおベネズエラについては、マドウロ政権下、経済状況の悪化に伴い、出国する外国人が多い。

２）イタリア人が多数住んでいるラテンアメリカの１０の国

イタリア人は、旧宗主国のスペインやポルトガルと並び、ラテンアメリカにおけるイタリア人の存在は大きい。とりわけ、アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジルでの存在感は圧倒的である。イタリア人のラテンアメリカへの移住は、１８２０年に始まり、１８３７年から本格化した。１８８７年から１９２０年にかけて移住者ラッシュが起こった。ブラジルに移住した外国人の半分以上がイタリア人であった。

第１位は、アルゼンチンでイタリア国籍を持った９８万人が居住している。イタリア・コロニアは、大変大まかであるが、２～３千万人という。ウルグアイと並び、イタリア人がスペイン人を上回る。アルゼンチンは、「イタリア人がスペイン語を話す国」と言われることもある。第２位は、ブラジルで居住者は５７万人、コロニアは、３．２千万人となっている。そう言えば、筆者の友人でイタリア貿易振興会のサンパウロ所長は、８分の１の混血まで入れると４～５千万人に上ると言っていた。以下、ベネズエラ、ウルグアイ、チリと続く。

（注）上段　現在住んでいるイタリア人、下段は、イタリア・コロニアの人口（子孫を含む）

３）ドイツ人が多数住んでいるラテンアメリカの１０の国

ドイツ人も結構移住する人が多い。ドイツ人の居住者国ランキングを見ると、圧倒的にブラジルで、５百万人という。ドイツ・コロニアは、１．２千万人に達する。ブラジルでは、イタリア移民ほどではないが、ドイツ移民の存在も大きい。２位のアルゼンチンは、ドイツ人居住者数は、５万人であるが、コロニアは３百万人に達する。コロニア数でみると、３位はチリで５０万人、４位がパラグアイで３０万人、５位がウルグアイで２５万人と続く。ボリビアにも２４万人のコロニアを有している。

（注）上段　現在住んでいるドイツ人、下段は、ドイツ・コロニアの人口（子孫を含む）

４）アメリカ人が多数住んでいるラテンアメリカの１０の国

次に米国人を見てみよう。米国人の場合、ビジネスに加え、老後の生活のために外国に居住するという２つの側面がある。第１位のメキシコには、何と１５０万人が居住している。旧NAFTA〈現USMCA〉のビジネスもあるが、圧倒的に年金生活者によるものである。第２位はブラジルで約１０万人、以下コスタリカ７万人、コロンビアとアルゼンチンが６万人と続く。１万人を超える国は、パナマ、ペルー、チリとなっている。

５）ロシア人が多数住んでいるラテンアメリカの１０の国

次に居住者は比較的少ないが、ロシア人を見てみよう。ロシア人コロニアを含めた数字で見ると、アルゼンチンには３５万人、ブラジルには３４万人のロシア人のコロニアが存在することは驚きである。これは、ロシアにいたユダヤ人との関わり、ロシア革命等の影響、近年では、キューバやベネズエラとロシアの政治的関係から来るものである。

６）アラブ系が多数住んでいるラテンアメリカの１０の国

ラテンアメリカに移住したアラブ系と言えば、レバノン、シリア、パレスチナ系が多い。１位のブラジルには、コロニアを含め、１２００万人のアラブ系が居住している。レバノン、シリア、パレスチナ系が多い。アルゼンチンでもシリア、レバノン、パレスチナに加え、エジプト、モロッコ系もいる。コロニアを含め３５０万人。３位のベネズエラもパレスチナ、シリア、レバノン系で、コロニアを含め、１６０万人。４位のコロンビアは、シリア、レバノン系が主流、加えてパレスチナ系で、コロニアを含め１５０万人。世界的に有名な歌手のシャキーラもアラブ系。５位のメキシコは、１１０万人で、レバノン系が多い。世界的大富豪のカルロス・スリムもレバノン系。６位のチリは、８０万人でパレスチナ系が多い。

７）ユダヤ人が多数住んでいるラテンアメリカの１０の国

ユダヤ人の居住状況を見ると、第１位がアルゼンチンで１８万人、ブラジルが約９万人、メキシコが約７万人となっており、１万人を超える国は、チリ、ウルグアイ、パナマである。ユダヤ人は各国で、強固なコミュニテイを作っている。

８）日本人が多数住んでいるラテンアメリカの１０の国

次にアジア系の国民のラテンアメリカにおける居住状況をみよう。日本人の場合、日本国籍を持って居住している人数のみならず、コロニアの総人口を紹介している。１位は、ブラジルで、現在日本では、１９０万人という数字が使用されているが、根拠のある数字ではない。ここでは、１６０万人となっている。ついで、ペルー、アルゼンチン、メキシコ、ボリビアと続く。残りの国は、すべて１万人以下である。

これとは別に、日本の外務省等が公表している日系人の中南米全体の日系人は、下記の通りである。

出所：JICA発行　MUNDI誌２０２０年１０月号

９）中国人が多数住んでいるラテンアメリカの１０の国

中国人の数字も中国人コロニアを含めた数字である。中国の場合、苦力として連れて来られた歴史的経緯もあることを忘れてはならない。２１世紀以降、中国の経済力が強固になった結果、新しい中国人が多数、ラテンアメリカにも来るようになった。第１位は、ペルーで何と１５０万人を数える。以下、４５万人のベネズエラ、２５万人のブラジル、２０万人のアルゼンチンと続く。さらにパナマ、キューバ、メキシコ、ドミニカ共和国、コスタリカ、コロンビアにも多数の中国人が居住するようになっている。

１０）韓国人が多数住んでいるラテンアメリカの１０の国

韓国人の場合、人口も少なく進出も遅れたので、それほど大きいプレゼンスは無い。とは言え、最近になって増加傾向にあり、ブラジルには、５．２万人、アルゼンチンには、２．３万人、グアテマラが１．３万人、メキシコが、１．２万人と続く。グアテマラに多数の韓国人が居住しているのは興味深い。

１１）全人口に占めるヨーロッパ系の人口数ランキング

次に、欧州人が各主要国にどのくらいいて、総人口の何パーセントを占めているかをみてみよう。１位はブラジルで、１億人を超えるが割合から言うと４９％である。総人口で見ると、ブラジルに次いで、アルゼンチン、メキシコ、コロンビア、ベネズエラ、チリと続く。一方全体に占める欧州人の割合からみると、アルゼンチン、プエルトリコ、ウルグアイ、コスタリカ、キューバ、チリと続く。

１２）全人口に占める先住民系人口数のランキング

下記の表は、先住民の人口ランキングである。アステカ、マヤ文明が栄えたメキシコ、グアテマラ、インカ文明の栄えたペルー、ボリビア、コロンビア、エクアドル等の国々には、先住民が多いことが理解できる。

１３）最も混血が進んでいる国ベスト１０

Los 10 Paises con mas mestizos en America Latina

これもYoutubeからの情報であるが、ラテンアメリカでは、歴史的に奴隷制度、植民地主義、独裁制、反乱、革命があり、先住民、アフリカ系と欧州人との混血が進んだ。これ等のデータは、CIA World Factbookからとったものである。

１４）ヨーロッパ主要国に居住しているラテンアメリカ人の数

最後に、ラテンアメリカ人は、欧州にも多数居住しているが、居住国ベスト１０を紹介する。圧倒的に多いのは、旧宗主国のスペインで、もう一つの旧宗主国のポルトガルも４位に位置している。２位はイタリアであるが、イタリア人はアルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル等に多数移住している。３位は英国、５位はドイツ、６位はフランスとヨーロッパの大国が続く。多くの国に居住しているのは、ブラジル人、コロンビア人、ベネズエラ人、アルゼンチン人、ペルー人、チリ人等である。YOU TUBEによるとデータの出所は国連ということである。

以　　　　上