『南米野外料理 アサード ASADO』 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『南米野外料理 アサード ASADO』 


本書の表題と「薪や炭を使ってじっくりと肉を焼くアサードは南米の典型的なグリルの手法だ」と裏表紙に書いてある惹句を見て、アルゼンチンの広大な牧場、公園や専門レストランなどで豪快に大きな肉塊-時には一頭丸ごとの牛や羊も- が焼かれる代表的な野外肉料理の紹介書と想像して手に取ると失望するだろう。

本書はドイツ、オーストリアやスイスのグリルに惚れ込んだ4人の料理関係者が、「ASADOとは、南米で食される様々な焼き網料理、すなわちグリル料理の総称である」と、南米起源の野外グリル料理であるアルゼンチンのアサードをはじめ、ブラジルの牛の部位毎に串に刺して回転させながらじりじりと焼くシュラスコなどから、ガウチョ(牧童)が熊手や鍬で代用することもあったという素朴なグリルを再現し、彼らの工夫を加えて、牛、豚、羊肉はじめ野菜、魚介から鹿などのジビエに至るまでを如何に旨く焼くかを紹介したものである。4人が語り実践する野外料理の豊かな世界は、基本的な火の使い方、塩、肉の部位、肉、魚介のグリル、さらに付け合わせ野菜、デザートに至る基本レシピの数々まで広がり、肉汁がしたたる実に旨そうなカラー写真を見るだけでも読者は大いに楽しめよう。

〔桜井 敏浩〕

(アディ・ビッダーマン、フランツ・グレーシング、ユルゲン・ケルネッガー、レオ・グラードウル 田中ケン監修、青木柊訳 グラフィック 2020年7月 224頁 2,900円+税 ISBN978-4-7661-3444-5 )