『ガリンペイロ GARIMPEIROS』 国分 拓 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ガリンペイロ GARIMPEIROS』 国分 拓 


 アマゾン河の奥地で金を探す人たち、ガリンペイロの土地に入り密かに取材を試みた迫力あるノンフィクション。ガリンペイロの世界には、誰でも受け入れる、犯罪歴・身分証明不要、金鉱山の所有者は米と豆を支給し所有者70%、ガリンペイロ30%で取り分を分ける、他人の黄金を盗んだ者は死、この場所を誰にも、去った後でも決して明かしてはならないという厳しい掟があり、著者も場所、ルートも明らかにしていない。ならず者たちの一攫千金を夢見ての過酷な作業の日々、ともすれば博打、酒、女に逃げ込む者も多い荒んだ生活を克明に綴り、何人かのガリンペイロの過去や黄金を掘り当てたという者の自慢話を聞く。それらの中には「天国はここなんだ」というガリンペイロがいたが、逃亡者も受け入れ「犯した罪が赦されること」だからなのか、ここが行き止まりなのか、その先があるのか、入ってしまった者は自身でも分からない、その答を知ろうともしない闇の世界である。
 本書はNHKスペシャルのテレビ報道の「大アマゾン 最後の秘境」、第二集「ガリンペイロ 黄金を求める男たち」(2016年5月8日放送)の取材から生まれた書き下ろしで、著者はそれまでもブラジルのファベーラ(貧困者集住地域)やアマゾン先住民を取材してきたNHKディレクター。

〔桜井 敏浩〕

 (新潮社 2021年2月 336頁 1,700円+税 ISBN978-4-10-351962-1 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2021年春号(No.1434)より〕