連載パナマ・レポート12: ルベン・ロドリゲス 2021年 4月分 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載パナマ・レポート12: ルベン・ロドリゲス 2021年 4月分


連載パナマ・レポート12: ルベン・ロドリゲス 2021年4月分

執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(北海道大学法学研究科助教・パナマ共和国弁護士)

I. 新型コロナウイルスの現状

4月26日時点で、パナマにおける新型コロナウィルスの感染者は363,165人、死亡者は6,212人、回復者は353,047人と確認された。2020年12月にワクチン接種を開始し、新感染者は減少傾向を示している。ワクチン接種による新感染者の減少を受け、政府は4月19日から夜間の飲食店やバーの営業再開を許可し、外出禁止時間を零時から4時までに短縮した。政府のワクチン接種計画により、人口の11%が第一回分の接種を受けている。接種計画はアメリカ産のファイザーワクチンを中心とし、700万回分を購入している。さらに政府は4月上旬にロシア産と中国産のワクチン利用を許可した。また、4月16日にイギリス産アストラゼネカワクチンの3万6千回分が届いた。ただし、ファイザー・ワクチンと異なり、アストラゼネカ・ワクチンに対する不安の声があった。ワクチンの安全性を示すため、カリソ(Carizoo)副大統領始め様々な大臣と局長がアストラゼネカの接種を受けた。さらに政府は4月21日に申請システムを構築し、アストラゼネカ・ワクチンの接種は希望する者に限られるようになった。22日から24日にかけて約3千人が接種を受けた。

また、4月14日にパナマ最高裁判所は、政府の新型コロナウイルスに対する措置の根拠となる外出禁止命令が合憲だと判示した。

II.経済

A. 経済状況

米州開発銀行のよれば、新感染者の減少によってパナマの経済は復帰傾向を示している。政府が外出禁止命令を緩和し、様々な事業の営業再開を許可したことによって、約15万人が職場に復帰した。2020年3月に停止された労働契約の50%が再開している。しかし、2020年に400,000人が失業し、復帰者中12,000人が解雇となったと労働局は明らかにした。また、統計局の予備的なデータによると2020年の失業率は18%となった。

民間企業協議会は、新型コロナウイルスの影響により解雇となった25歳以下の若者を対象とする制度、行政手続きの緩和、公共事業の拡張に着目する経済復帰計画を政府に提案した。
 政府は、4月6日に、2020年12月31日納付期限の所得税等遅延税の支払期限を、2021年8月31日までとし、85%までの遅延税免除に関する法を発布した。さらに、この法律は対象者を拡大し、歳入局(Dirección General de Ingresos)に対して金銭的な債権を持つ者は、所得税との相殺の請求を規定している。また、国会では、不動産販売や購入に対する税額控除および建設への支援によって、建設業界の復興を目的とした法案が議論されている。
 なお、政府は観光産業の促進に約900万ドルを充当している。観光基本計画では、2021年に160万人の観光客がパナマを訪れると予測されているが、3月は1,800人の観光客しか入国していない。

B. 経済統計

統計局は2020年の予備的なデータを公開した。2018年を基準とし、建設、卸売・小売、およびサービス業は、新型コロナウイルスによって最も影響を受けたことが明らかになった。物流と合わせて、これらの業界は例年GDPの70%を占めている。統計局のデータによれば、最も影響を受けた部門は、建設(-49%)、卸売・小売(-19%)、不動産等(-11%)、ホテル・レストラン(-6.8%)である。運送業界は、物流と旅客輸送(交通機関も含む) を包含している。以上にもかかわらず、統計局は2021年の経済が前年同期比10%増加すると予測している。

農畜産業の5%減少は、新型コロナウイルスのみならず、大型ハリケーン・エータの影響が大きい。パナマ農業県のチリキ県から、隣のベラグアス県、エレラ県、コクレ県では牛400頭、米の栽培地約900ヘクタールの他、バナナ、ジャガイモ、レタス、キャベツ、ブロッコリー、玉ねぎを栽培する数百ヘクタールの土地が被害を受け、その損失は1,000万ドルを超えると予測されている。

特に建設業では2006年以降、政府は、パナマ運河の拡張、高速道路、パナマ市のメトロといった公共事業に力を入れてきたが、様々な理由により2018年からは減少傾向にある。

また、4月から10月まで人道的な理由を除き、入国が原則禁止とされ、観光客は前年同期比79%減の560,153人となった。観光局のデータによると、パナマに入国する者の90%が観光目的で訪れ、以前から観光産業はGDPの5%となり、ホテルやレストランも含めると15%を占めている。

観光局は、民間部門と協力し、持続可能なツーリズムを中心に約3億ドルの充当を予測した2020-2025年の観光促進計画を作成した。近年観光客の人数は減少傾向にあるが、一人当たりの旅行支出は上がっている。

C. 海事業界

パナマ運河庁は、2月に発表した4月15日実施予定の通過予約制度の値上げを6月1日まで延期することを明らかにした。海事会議所(Cámara Marítima de Panamá)は、突然の値上げを批判し、延期を求めた。

国会は港湾法を改正し、港湾労働者の最低賃金を3ドル38セントから4ドル15セントに引き上げた。これに対して、パナマ海運庁は最低賃金についての議論が必要であると述べ、港湾法改正に反対している。また、パナマ海事会議所は、コロンビアの港湾労働者の月収が290ドルであるのに対して、改正された最低賃金のパナマ港湾労働者は月収が800ドルとなるため、競争力を失うと述べている。2020年のコンテナ平均積載量は前年同期比9.81%の増加を示している。また、パナマ海事会議所は、ポスト・パナマックス船に対応できる港の建設が必要であると主張している。現在、太平洋側の港には、ポスト・パナマックス船を取扱える埠頭は5つしかないため、ポスト・パナマックス船はコロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国の港を利用している。