執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(北海道大学法学研究科助教・パナマ共和国弁護士)
5月25日時点で、パナマにおける新型コロナ・ウィルスの感染者は374,356人、死亡者は6,346人、回復者は362,177人と確認された。接種計画は、1月20日に開始し、5月17日時点で約954,000回分が提供された。さらに、政府はファイザーワクチンの920万回分の購入を交渉したため、4月に認可した中国産のsinovacとロシア産のsputnikワクチンを利用しないことを発表した。また、5月20日にファイザーワクチンの108,000回分、22日にアストラゼネカワクチンの204,000回分が届いた。接種計画によってパナマ県と西パナマ県を始め、ほとんどの県における感染者数は減少し、5月17日と18日に死亡者は0名となった。これに対して、コスタリカに接しているチリキ県とベラグアス県において感染者数は増加し、政府は夜間外出禁止令と日曜日の外出禁止令を発令した。また、チリキ県の状況に応じて、ラファエル・ヘルナンデス病院に新たな200病床を追加し、感染者の多い地域では優先的に接種計画の開始を発表した。
5月21日に、国会議員を含め国会職員が接種を受けたことが分かった。しかし、計画の元では、ワクチンの接種はハイリスク・グループの職員に限られているため、接種を受けた5人の国会議員が批判されている。これに対して、スクレ(Sucre)国会での接触は、保健相ではなくワクチン運転センター (Centro de Operaciones de Vacunas)の<Panavac-19>が許可したと述べた。
A.警察長の解任
5月21日に、コルティソ大統領は、ガブリエル・メディナ(Gabriel Medina)警察長を解任した。政府は解任理由を発表していないが、5月20日に警察庁のSNSアカウントでコロンビアの警察への支援メッセージが投稿された。パナマ憲法第311条は、選挙の参加を除き、団体また個人を問わず、警察庁およびその職員による政治的な発言は禁止され、違反した者は解任されると明記している。
B.保健の予算と年金制度
政府は2021年の保健予算に34億ドルを充当すると明らかにした。その内訳は、パンデミックの対策には約1億ドル、保健省には14億ドル、ゴルガス記念研究所には、2,100万ドル、そして社会保険庁には約18億7千万ドルとされている。さらに、2021年12月31までの医療職員の給付には、約4億1,500万ドルが用意されている。
また、労働契約停止によって年金制度を管理している社会保険庁の歳入は、2020年3月から2021年4月の間、約4億6千万ドル減少していることが分かった。社会保険庁は、2020年における約30万人分の20億ドルの年金給付に対する歳入は、9億3400万ドルであったと発表した。
C.経済状況
ザパタ労働相は、新型コロナウイルスの影響は、1989年のアメリカによるパナマ侵攻時を上回っていると述べた。侵攻後の失業率16.3%に対して2020年の失業率は18%まで上がった。また、統計局は2020年の海外直接投資は5億8,800万ドルで前年同期比82%減少したと発表した。2018年以降の海外直接投資以下の次の通りである。
さらに、2020年3月に、停止された29万労働契約の中、約15万5千が復帰している。また、2021年1月から4月まで約6万6千の新しい労働契約(月1万6千程度)が結ばれ、2021年の新しい労働契約は20万に至る(前年同期比70万増加)と予測されている。政府は、景気回復を刺激するため、「テレワークビザ」の導入を決定した。テレワークビザは、最長19ヶ月で、月収3,000ドル以上、一時的にパナマに滞在する海外企業の社員、または海外企業へのサービスを提供する者に限られている。
D.金融業界>
銀行監督官は、2020年の銀行業界の総利益は前年同期比45%減少し、国際銀行の配当金支払延期、収入の減少、および費用の増加によって2021年1月から3月の総利益は3億1,400万ドルとなり、前年同期比32%減少したと発表した。これに対して2021年3月時点の銀行資産は、約1,300億ドルに上がり、前年同期比3.2%増加したと発表した。また、パナマ銀行法において、銀行業界の流動性は最低限30%とされているが、現時点では60%を上回っている。4月15日に米国格付け機関であるムーディーズは、2021年の景気回復を予測し、パナマ銀行業界の信用格付を「安定」とした。国際通貨基金は、政府の接種計画の実施、銅鉱業、民間投資の増加を根拠とし、2021年のパナマ経済は、12%成長すると予測している。
E.パナマーコロンビア国境の封鎖
コロンビア政府が5月19日にすべての国境を開放したことに対して、パナマ政府はコロンビアでの新型コロナウイルスの増加を理由とし、5月20日にコロンビアとの国境を封鎖した。また、コスタリカでは、感染者数が増加しているため、コスタリカ国境の封鎖を求める声も出ている。