米国の人口4億人のうちヒスパニックは6,000万人と言われる。うちメキシコ出身者が63%を占めており、まずヒスパニックを語るにはメキシコ人の気質やメキシコの特徴を見ることでその行動が似通っていることを見る。米国という巨大な市場に隣接したメキシコで、日本企業が共生しどのようにビジネスを進めるのがよいか、上手なオペレーションを行うための著者独自の提唱として、ヒスパニック消費市場へ食い込むためにはスペイン語による広報やその気質を熟慮した取り組みが必要であり、米政府のマイノリティ自立策とは異なり日本企業はヒスパニックをその出身国で活躍できる人材として登用すべきと指摘している。そして日本企業が、ヒスパニックを通して米・メキシコの一体型ビジネスを現実化するためにも、グローバルに活躍できる人材育成が急務であることを説いている。
著者は住友商事で38年間自動車製造関連ビジネスに従事し、うち17年はメキシコに駐在した。その後官民交流人事で2017年から2020年の間駐エルサルバドル大使を務めた際に得た知見も交え、米国におけるヒスパニックの活躍と、スペイン語とビジネス関係を共通項として結ばれるメキシコと米国の関係、自動車産業を中心にメキシコ人気質、ヒスパニック消費市場への食い込み、ヒスパニックマイノリティとの協業、ヒスパニックの人材登用、さらにメキシコでの事業推進への有用な提案と、グローバルに活躍できる日本人人材の育成の緊要性を強調している。巻末に参考資料として、メキシコの経済発展を支えた自動車産業の歴史と現況が付されている。
米国の自動車市場・メキシコ自動車産業におけるビジネスの創出、この地域での会社経営やこれからのグローバル人材の育成に資する、著者の長年の実務経験と知見からの有益な示唆が多々受けられる。
〔桜井 敏浩〕
(日本橋出版 2021年6月 218頁 1,600円+税 ISBN978-4-908862-96-0 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2021年夏号(No.1435)より〕