『メヒコの衝撃 -メキシコ体験は日本の根底を揺さぶる』 市原湖畔美術館・現代企画室編 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『メヒコの衝撃 -メキシコ体験は日本の根底を揺さぶる』  市原湖畔美術館・現代企画室編


1609年千葉県御宿沖で当時スペイン領だったフィリピンからメキシコに向かう帆船が座礁し、村人がその遭難者を救出して大多喜藩主が保護、その後徳川家康の計らいでメキシコに帰した。このことから日本・メキシコ交流に特別な関係にある千葉県の市原湖畔美術館が、メキシコ独立200周年を機に両国の交流の歴史をひも解き、メキシコの歴史、風土、人、芸術に惹きつけられて自らの表現を創り出した日本人アーティストのメキシコ体験を多角的に解き明かそうとした特別展(2021年7月~9月)を開催した。

メキシコ革命直後の壁画運動に感銘を受けて帰国した北川民次、メキシコ滞在を経て新たな表現に挑んだ刀根山光人、近年30余年ぶりに返ってきて東京の渋谷駅構内に展示された巨大壁画「明日の神話」をメキシコで描いた岡本太郎、版画指導でメキシコに招聘された深沢幸雄、メキシコ民衆の間で生きる妖怪の仮面の膨大な数を収集した水木しげる、「死者の日」の祭りに魅せられ極彩色で魔法画を描く絵本作家スズキコージ、マヤの人たちが現世と黄泉の国を結ぶと信じたユカタンの「セノーテ」洞窟泉の映画を撮った小田香の代表作を多くのカラー写真で紹介している本書は、その出品作品の紹介と彼らのメキシコとの関わり、識者の解説とエッセイで構成した充実した展覧会図録。

〔桜井 敏浩〕

(市原湖畔美術館発行・現代企画室発売 2021年7月 142頁 2,500円+税 ISBN978-4-7738-2104-8 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2021年秋号(No.1436)より〕