『ある無名兵士の変遷 -ゲリラ兵、軍人、修道士、そして人類学者へ インディアス群書 15 』 ルルヒオ・ガビラン - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ある無名兵士の変遷 -ゲリラ兵、軍人、修道士、そして人類学者へ インディアス群書 15 』  ルルヒオ・ガビラン


 アンデス山間の貧しい先住民の村に生まれたルルヒオは、1983年子どもながら兄の後を追ってテロ組織センデロ・ルミノソ(「輝ける道」(SL)、正式名称はペルー共産党(PCP)で指導者は元国立大学教授のアビマエル・グスマン、毛沢東主義の極左暴力組織)に国家の根本的改革を成し遂げるという宣伝を信じて入隊したが、戦闘と仲間うち、勢力圏の農村地帯での暴力の横行に失望しつつあった時に、1985年に政府軍との戦闘で捕らえられ、助命され兵士となった。ここもSLと同じくゲリラやその支援者と見なした農民のみならず、軍隊内部での弱い者、新入兵への暴力が日常の世界だったが、一方理解ある将校によって勉強を続ける機会を得た。しかし、1993年に昇任間際まで行きながら国軍を離れ、「あなたは神父になれる」と修道女に言われたところからフランシスコ会の見習い修道士になったが、数年後神父になる道から離れ、国立大学で人類学を学び始めてすぐこれが天職と確信し研究者の道へ進んだ。修士論文の指導教授に書きためた手書きの自伝を見せたところ出版を勧められ、世に出たのが本書である。
 ゲリラ組織と国軍の少年兵として、ペルーの近年の暴力と残虐行為の痛ましい歴史の中で体験してきた半生の記録だが、著者が「そこにいた」という過程での事実をありのままに時系列に沿って綴ったこの自伝は、当時のペルーで現実に起きた暴力応酬の実態が窺わせる。

〔桜井 敏浩〕

 (黒宮亜紀訳 現代企画室 2021年4月 296頁 3,000円+税 ISBN978-4-7738-2101-7)
〔『ラテンアメリカ時報』 2021/22年冬号(No.1437)より〕