『古代インカ・アンデス不可思議大全』では、アンデスの神話・伝説からプレインカの諸文明、インカの解説に始まり、スペイン人の来寇、ナスカの地上絵の謎について、豊富なマンガ、イラスト、軽妙な語り口ではあるが内容は正確な解説で満たされている。
著者は1966年生まれ、これまで世界各地の古代文化をマンガと平易な解説文と旅行記で紹介する『不可思議大全』『うんちく図鑑』を出している。巻末に詳細な索引と全般、掲載事項別の出典・参考文献、作図・イラスト毎の参考にした著者が撮影した収蔵物のある博物館等の名称がきちんと掲載されており、『不可思議大全』についてはアンデス文明研究者の助言を得たと言っているが、確かにある程度アンデス文明、考古学に通じた読者にも十分応えられるレベルの書。
『アンデス・マチュピチュへっぽこ紀行』は前書の姉妹編の旅行編だが、リマの博物館からクスコとその周辺、マチュピチュの詳細、さらにボリビアのティティカカ湖沿岸、ウユニ塩湖、さらにチリの首都サンティアゴまで足を伸ばし、一転してナスカの地上絵、アンデス文明最古のカラル遺跡、アンデス文明起源の地と言う説もあった中部高地のチャビン・デ・ワンタル、北部のモチェ等の諸文化の遺跡、普通の観光客がまず回らないクントゥールワシの神殿やチャチャポヤス遺跡とその最大のクエラップ砦跡、再びリマに戻って国立博物館や天野織物博物館等を実に精力的に見て回って特色等を明解に描いている。こちらも索引、参考文献リスト等が載せられていて、単なるマンガ旅行記の域を出ている。
〔桜井 敏浩〕
(草思社 各 2022年2月 1,800円+税 ① 336頁 ISBN978-4-7942-2560-3 ② 320頁 ISBN978-4-7942-2561-0 )