転換期に差し掛かっていた国際社会を直撃し、国際秩序の変化を加速させた2020年初から世界に蔓延している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍がさほど遠くない将来に明ける時、アフター(ポスト)コロナを見据えたどのような国際秩序が展開するのかを、非欧米の新興国、開発途上国を対象に16人の研究者による論集。
ラテンアメリカでは2本の論考を載せている。「地域大国の立場」の章では「ブラジル・ボルソナーロ政権はなぜパンデミックを防げなかったのか? -予見されていたコロナ禍の危機と米中対立下での外交戦略」(舛方周一郎東京外国語大学講師)で、コロナ対策に失敗されたとされているボルソナーロ政権がむしろ「新しい政治」を目指していたが故に対策が不十分だった、独自の問題を抱えていたのだと指摘している。「地域のまとまりと分裂」の章の「キューバ白衣外交の文脈 -トランプとコロナ」(上 英明東京大学准教授)では、キューバの整っている国内医療制度が新型肺炎対策では有効だったが、コロナ禍では内外の対応が米国のトランプ政権の圧力によって殺がれた、八方塞がりの中でキューバはまだアフターコロナの展望を描ききれずにいると指摘している。
〔桜井 敏浩〕
(東京大学出版会 2021年12月 192頁 1,500円+税 ISBN978-4-13-033302-3 )