執筆者:硯田一弘(アディルザス代表取締役)
4月30日はパラグアイでは”教師の日”(Día del Maestro)でした。
↑パラグアイGoogleの可愛いDoodle、教師の皆さんに感謝!
教師の日っていうのは、世界中に国々が独自に決めており、アルゼンチンでは9月11日、ブラジルでは10月15日、チリでは10月16日、ボリビアでは6月6日、ペルーでは7月6日と、南米各国の間でもバラバラです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%99%E5%B8%AB%E3%81%AE%E6%97%A5
一方、5月1日は世界共通のMay Day(メーデー)=Día de los Trabajadores( 労働者の日) です。教師の日は教師に感謝をする日とされていますが、祝日ではありません。一方5月1日労働者の日は世界的に祝日とする国が多く、パラグアイもその一つです。でも日曜日と祝日が重なった時に代休となる日本とは異なり、普通は祝日が日曜と重なると皆残念がるのですが、今年は多くの国々で月曜を代休としているようで、パラグアイでも三連休となりました。因みに5月14日は独立記念日の祝日ですが、これは土曜日で代休にはなりません。残念!
先週お伝えしたアルゼンチンの為替という話題は多くの方々が驚かれたようで、日本人が漠然と抱く南米への恐怖心を少し煽ってしまったかもしれない、と反省しました。今週は、通貨下落の最先端ベネズエラの友人と交信し、ベネズエラ国内の経済事情について最新の話を聞くことができました。それによると、ベネズエラの最低賃金は126ボリ、現在の中銀レートが4.46ボリ/US$なので月給約28ドル=3,670円。他の南米諸国がだいたい400ドル前後ですから、14分の1レベルの給料で働かされているとのこと。ただ、並行レートは4.75ボリ/US$で、中銀レートとの乖離は大きくなく、昨年10月に実施した百万分の一のデノミ効果はそこそこ上がっているかのように見えますが、実際には米ドルが市中で益々流通しているようです。
中南米ではパナマやエクアドルは自国の紙幣を発行せず、正式に米ドル紙幣を国内通貨として流通させていますが、政府発行の紙幣が機能しなくなったベネズエラでは、自国新紙幣よりも米ドル通貨の方が信用されている構図が改めて理解できました。その意味では米ドル現金でお得な買い物ができたアルゼンチンもペソ紙幣の紙屑化が着実に進行していると言えるでしょう。一方、キューバは仮想通貨の活用を進めているようです。
こうしたダメ政府による通貨価値の下落の様子は急激な円安が進む日本でも、反面教師としてシッカリ学習して欲しいものです。
もうひとつ、高騰する燃料対策として2019年1月から国交を断絶しているベネズエラから輸入すべきとの声がパラグアイ国会の一部の議員から上がっています。しかしベネズエラとの貿易を再開することは、マドゥロ偽政権を認めることになり、彼らが主張するパラグアイ政府の未払い債務問題を再燃させる危険性が高いのでやめるべき、との反対意見も出ています。ロシアのガスや石油に依存する日本とも似た話ですが、悪いものは悪いとして毅然たる態度を貫いているパラグアイ政府、立派です。
土曜日のLa Nacion紙の一面を飾ったのは眺望の良いレストラン特集。
コロナ禍の所為で一番眺めとサービスの良かったLuna 21というレストランは廃業に追い込まれましたが、同じWTCビル群のZuru(アフリカ料理)や展望レストランの老舗Sheraton Hotelの最上階、コロナ禍の最中にオープンしたNapoleonや旧市街のNegroni等の眺望を誇るお店が紹介されています。
2015年1月に初めてアスンシオンに来た時に宿泊したSheratonホテルの屋上から眺めた景色で、最も高くて目立ったのは中銀ビルのみで、10階建のシェラトンより高いビルは見えなかったのですが、今やシェラトンを足元に見るような場所での会食が気軽にできるようになり、急激な発展を遂げる街の様子を眺めながら優雅に食事ができるようになっています。こんな景色を眺めるだけでも気分が高揚してきます。
サンパウロへバスによるロジステイックの確認旅行のためお休み
今日5月14日はパラグアイの独立記念日(Día de la Independencia Nacional)です。で、15日はパラグアイでの母の日。14-15両日が独立記念日であり、独立の母の日という解釈もあるようですが、この二日間はパラグアイ人にとって家族と過ごす重要な行事の日です。
先週はパラグアイとブラジルの間のロジスティクス環境確認の為に、往復3,000㎞の陸路を長距離バスでサンパウロ近郊まで出向いていた為に「言葉」の発信ができませんでした。
しかし、コロナ禍の呪縛から解き放たれつつある両国の様子をつぶさに観察する機会を得た事は大変貴重な経験でした。パラグアイ南半分の西端に位置する首都アスンシオンから東端の街シウダードデルエステ市までの道路が整備されて便利になっていることは何度もお伝えしてきました。では、ブラジル側の実態はどうなのか?ということを体感してみようと出向いた訳ですが、当然のことながら、南米の大国ブラジルの道路は人や物資の長距離移動が円滑にできるよう、キッチリ整備されています。
写真の大型バスは燃料タンクの容量が600ℓ、満タンで片道1600㎞は走れるそうで、給油無しで乗換駅のフォスドイグアスからサンパウロまで1100㎞の道のりを余裕で走り切りました。
サンパウロに駐在していた時にも何度も使っていましたが、サンパウロから北西に伸びる州道348号線は、なんと片側5車線、中央分離帯も相当の幅があって名古屋名物の百メートル道路もぶっ飛ぶ迫力で、この国の底力を感じさせる立派なインフラであることを再認識しました。パラグアイとブラジルの陸路の運送に関する安全の状態を体感しに行った訳ですが、今回の往復でこのルートには全く問題は無い事を改めて確認できました。
今回6年ぶりに訪ねたサンパウロの街は活気を取り戻していて、特に週末の日本人街リベルタージや日曜日のパウリスタ大通りの歩行者天国はものすごく大勢の人出で賑わっていました。
昔の職場の直ぐ近くにあるサンパウロ美術館、入場券は現金でなく携帯のオンラインで購入してQRコードで提示する非接触方式になっていて、コロナによるデジタル進化を体験できましたし、ピカソ・ゴッホ・モネ・マネ・ルノワール・ロートレック・エルグレコなどの名作の常設展示、日本でなら長蛇の行列でしか見られないような名画の数々を間近にジックリ鑑賞できるのは、サンパウロならではの愉しみでした。
と、ブラジルの話をし始めるときりがないですが、今回仕事の御縁が出来たので、また近いうちに空路で訪問したいと思います。因みにバスの料金は、アスンシオンーフォスドイグアスが往復Gs.300,000=約1万円、フォスーサンパウロが往復R$800=約2万円。バスはグレードによってもっと安い運賃のモノもありますが、車内の衛生環境や治安状況を考慮すると、少し高めでも安全な会社を選ぶことをお勧めします。
さて、5月15日は日本では沖縄返還50周年ということで、NHKでも沖縄関連の報道が中心に据えられています。今回サンパウロではたまたま一時帰国の途中で立ち寄られていたボリビア在住のウチナーンチュ実業家にもお会いして色々な話を伺ってきました。この方はOKINAWA to 沖縄というプロジェクトの仕掛け人で、沖縄移住者が多いボリビアのサンタクルス県を拠点に、沖縄県との関係強化から、南米ー日本という大局を見すえて行動されている大先輩。
これまでオンラインや電話での会話はしていたものの、今回初めて実際にお目にかかってジックリ話を伺うことができ、世界中が新型コロナやプーチン戦争の所為で困難な局面に対峙している今こそ、食糧基地としての南米の底力を発揮すべき時、という御意見に、大いに意気投合して帰ってきました。https://www.qab.co.jp/news/20210330135565.html
これからはパラグアイ-ブラジルだけでなく、ボリビアとの協業も積極的に仕掛けていきたいと思います。
まだまたお伝えしたい情報は沢山ありますが、一回の紙面では書ききれません。ラテンアメリカ協会の「ラテンアメリカなるほどトーク」というイベントの第二弾が企画されており、今年は6月に登壇の機会を頂きましたので、書ききれない情報はこの時に御披露します。詳しくは日本ラテンアメリカ協会のホームページをご確認ください。
パラグアイには主要な新聞が3紙ありますが、その一つLa Nacionが今週創刊7年を迎えるそうです。https://www.lanacion.com.py/gran-diario-domingo/2022/05/22/la-nacion-cumple-27-anos-de-aporte-a-la-sociedad-paraguaya/
1995年に始まった比較的新しいメディアと言えます。
そこで他の2紙についても調べてみると一番古いabc color紙が1967年8月の創刊、当時の独裁政府の迫害によって1984年に一旦廃刊、独裁政権がクーデターで倒れた直後の1989年3月に復刊しています。
https://www.abc.com.py/abc-color/nuestra-historia-382868.html
一番古くても55年の歴史って?と思ったものの、1845年4月創刊のEl Paraguayo Independiente紙の流れをくむということで、こうなると日本では徳川家慶の江戸時代ということになり、日本で最初の新聞が発刊した1870年より早いことが判ります。
もう一つのUltima Hora紙は1973年10月、夕刊紙として発刊、やはり独裁政権からの迫害を受けて危機に見舞われながらも今日に至っているとのこと。1999年には朝刊の発行を初め、2002年に夕刊が廃刊になるまでは朝夕刊二紙を発行していたということで、南米の新聞では珍しいのではないかと思われます。
https://www.ultimahora.com/nuestra-historia-n40736.html
そのUltima Hora紙にPlaza Italiaという公園が100周年を迎えるという記事を見つけました。https://www.ultimahora.com/la-plaza-italia-y-sus-100-anos-un-lugar-atenuar-la-nostalgia-n3002369.html
イタリアからの移民が集い、その後の各種政治集会などの舞台にもなった公園は、今も周辺の人々の憩いの場になっているものの、整備状況に問題を抱えているようです。パラグアイでは気象レーダーですら3年前に国内唯一のアスンシオン国立大学内の機器が故障して機能しておらず、公園に予算が回るのはまだ先のことと思われますが、インフラ未整備を指摘して政府に気付きの機会を与えるという点で、パラグアイの新聞も大きな役割を果たしていると言えます。
また、abc color紙では同紙の専属カメラマンRoque Gonzalez Vera氏がパンタナル湿原の写真を撮り始めて30年という記事も掲載されています。
パンタナルは世界最大の熱帯湿原で、日本の動物写真家である岩合光昭氏の写真展が東京都写真美術館で開催されるようですので、御興味のある方はご覧ください。
https://www.fashion-press.net/news/87903
と、今日は周年記念日の記事を多く目にしたので、誕生日という言葉を御紹介しました。
過去に何度もご紹介しましたが、誕生日を祝う歌、ハッピーバースデーの曲は南米でも同じ旋律なのですが、これにチャチャチャの前奏を付けたベネズエラ盤が秀逸だと思うので、改めて御紹介します。https://www.youtube.com/watch?v=N2BV9lHdzrI
南米各国では新聞の日曜版は色々な特集記事や別冊もついて豪華なものが多いので、これから散歩がてら日曜版を買って楽しみます。
以前もご紹介したパラグアイとブラジル、アルゼンチンの三国国境地点でパラグアイとブラジルを結ぶ新しい橋、el Puente de la Integración(統合大橋)が完成まで残り100mを残すのみとなりました。
この橋が完成すると、朝夕のラッシュ時に激しい渋滞が発生して通行時間が読めない友情の橋の交通量の多くが統合の橋に流れ、パラグアイ側エステ市のバスターミナルからブラジル側フォス空港まで25㎞、一時間以上かかるところ半分以下の時間で確実に往来することが可能になると考えられます。
こうしたインフラ整備は、両国が資金を出し合って相互の利益の為に推進しているという点で、非常に有意義な開発案件と言えます。
一方、今日の日経に中南米での人民元による外貨準備が急増しているという記事が掲載されています。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA251VV0V20C22A4000000/
中国からの過度なインフラ投資の押し付けによる債務超過でデフォルトに陥ったスリランカが話題になりました。
ベネズエラは十年以上前から、その他の中南米各国も、中国に食糧などを輸出して中国から自動車や家電・衣類等様々なモノを輸入するという中国依存度が高まっており、中国は中南米でも活発な投資も行なって、各国政府の中枢にも食い込んで強引とも言える関係強化を行っています。
今週は日本から経産省の幹部がパラグアイを訪問、食糧自給率世界一でありながら、中国と国交を持たないパラグアイ政府との関係強化を目指して色々な話し合いが行われた模様です。こうした取り組みによって、世界一豊富な食糧資源を持ち平均年齢35歳以下という若いパラグアイと、知財や人材というノウハウに長けた日本との関係が強化されることを大いに期待したいと思います。